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文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
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- 虹(2020年02月18日)
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この世で何が起こるのか 予め分かっていたら多くの者は生まれなかったろう 名のある俳優は脚本を選んで出演する 一方名のない研修生は馬の足でもいいので出演したいという 監督はその他大勢から悪役、端役を選ぶ 台本は様々ある マルキ・ド・サドの【美徳の不幸】は 信心深い薄幸の少女が苦難の末雷に打たれて死ぬ物語りである 人の世の後半顧みれば削り取りたい…
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- 一番星(2020年02月01日)
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夢の中では大事なことだったのに 目が覚めると思い出せない 人の気配にフト立ち止まることがある 「そこで 何をしているの?」と声がしたので 見回すと誰もいない 子供の頃は勉強することだった 母子家庭の私は早くお金を得ることだった 共に暮らす女性を探すことだった 人の役に立つ仕事をすることだった 人の世の終りが見えた頃 このま…
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- 気配(2020年01月14日)
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雨が降り出す前の気配がある 鳥や虫たちが息を潜めている 雨が止んだ後の気配がある 鳥が飛び立ち 葉末の露が光る 雪が降り出す前の気配がある 雪が降っている気配がある 雪が止んだ気配がある 今まで人がいた気配がある ・・・暫く近くにお母さんが居た・・・ 妻の死後二人の娘が同じことを言った やがて気配がうすれ何処かへいった その後はたまに夢に…
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- 世界で一番小さな湖(2019年12月31日)
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サーチライトのように バーテンの視線が 客を照射していく あのキリマンジャロの頂きまで のぼりつめ息絶えた一匹の豹 ふもとの小さなバーで バーテンがポツリと語った 「生きることを極めたかったんだね、きっと」 私はヘミングウェイの小説の場面を じっと思い浮かべていた 都会のネオンの輝きは決して届かない 古ぼけてしまって歴史だけが何かを …
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- 野の花(2019年12月15日)
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ネズミはネズミのように考えネコはネコのように考える あるとき一匹のネズミがネズミであることに疑問を感じた あるとき一匹のネコがネコであることに疑問を感じた しかし 自分が嫌になったネコやネズミに他に生きる世界があるだろうか ネズミであることが嫌になったネズミは旅にでた ネコであることが嫌になったネコは旅にでた 家を出た二人は野の果てで仏に出逢…
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- 沈黙(2019年11月27日)
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答えられない問があります 難しくて判断が出来にくい場合です 選択肢が幾つもあるのに二者択一である場合です 例題が適正でない場合です 質問が的外れの場合です 相手の方が理解する基礎的知識を欠いている場合や 冷静な判断が出来にくい状態にある場合です 地球が回転体ならば 下側の人間はなぜ落ちないか 当時この難問に上手く説明できる賢者はいません…
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- 秀吉の遺産(2019年11月13日)
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その人に逢ったことが無くても その人のやったことを知れば凡その人柄が分かります その人の作ったものを見ればその人の好みが分かります どんなに勝れた楽器も その人の力量以上の音は出せないように 高価な絵の具を与えれば 誰でも良い絵がかけるわけではないように 自分に無いものや自分を超えたものは見えないし聞こえない 秀吉は茶の心が分からなかった…
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- 舞台(2019年10月28日)
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始め宇宙には何も無かった 永い永いあいだ何も無かった 客が去った後の深夜の劇場と同じだった たまりかねてある時ピエロが飛び出しパンと手を叩いた 暗闇の中に一輪の花が現れた もう一度手を叩くと男の子がでてきた 静止画だった ピエロがまた手を叩くと女の子が現れた 男の子が急に歩き出した 男の子は花を手にすると女の子に手渡した ここから世界が始…
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- 彼岸花の季節(2019年10月14日)
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野の道は曲がっているので (自然の道はみな曲がっている) 歩いていくにつれ景色を開いていくのです 夏が終わる頃 いつの間にか彼岸花が咲いている景色に遭遇しました 見慣れた野道には権威ある者が急に通達を出したように 彼岸花が赤い傘を掲げた古の官女のように居並び 道端の草の中に咲いていました 彼岸花はなぜ人里の道端に並んで咲くのか 早朝誰かが球…
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- アンデルセンのことば(2019年09月28日)
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マッチ売りの少女は凍えて死んだ 人魚姫は泡となって消えた アンデルセンの童話はハッピーエンドではない 「それじゃ、まるで現実そのものじゃないか とてもこども達に聞かせる話じゃない」 出版当時のデンマークでも評判がよくなかった 中でも可愛そうなのが人魚姫である マッチ売りの少女は死んだあと幸せを得た 優しいおばあちゃんと天国に行ったのだ 人魚…
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