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文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
新着記事
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- 見えない 聞こえない(2019年02月24日)
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木に登れば川が見える 石段を上ると町が見える 山に登ると海が見える 高く登ると見えなくなるものがある 草叢の赤い実 草の葉裏に隠れたテントウムシ 人の世の階段を駆け上り人の上に立つ 百人の長がいる 千人の長がいる 万人の長がいる 数が増えるにつれ個人の区別は分からなくなる 一人一人の人間が分るのは十人くらいまでだ それで野球は九人 …
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- 冬の丘のドラマ(2019年02月11日)
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何もない冬の丘の上に 今朝は灰色の幕が上り 久しぶりに青空がのぞいている このステージには時折り バードウオッチングの者なら誰でも 息をのむ色鮮やかな野鳥が横切り 様々な形の雲が現れる やがて日が暮れると豪華な夕焼けが見られる そして夜の帳が下りれば ナレーションなしで朝まで太古からの星座が登場する そんな夜空を峠で明け方まで 一人で観…
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- 悲しいトランペット(2019年01月28日)
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トランペットは少年のものだ 私だけの確信だ あの透明で澄みわたった音色 少年Yはいつも寂しかった 父もなく、母もなく 親類の家で育てられた 少年のなぐさめは猫だった そしてトランペット 猫だけが少年Yを理解している Yはそう思っていた 猫とたわむれると きまってYはトランペットを遠く秩父の山並みに向かって吹いた 悲しみにあふれた音色だ…
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- 「月と雷門」(2019年01月15日)
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先日私は「月と雷門」という不思議な絵を入手した。不思議という言葉が適切かどうか、この際おいておこう。 全体が黒で、浅草の人通りがほとんどなくなった夜空は清晨を保ち、中天に浮かぶ月はまさに上弦の月という名にふさわしく何万年も前からの光沢を放っている。人類がこの地球上に現れる前から同じ表情を崩さないと思うと、それはもう美をこえて、怪しげな光彩とといった方がいい…
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- モカとロレンス(2018年12月31日)
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モカのコーヒーをすするといつの間にかアラビアの広大な砂漠がぼくの眼前に広がってぼくはアラビアのロレンスになる。 ラクダにまたがり砂塵を舞い上げ駆け抜けていくあの男。あの勇姿が。 そしてモカの香りと一緒になってぼくは幻の中に酔っている。 このとてつもなく古めいた茶房。 昔の歌ばかりがなまめかしく流れてくる。 「いつかあなたと行った時の小さな赤いイス二…
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- 選ばれた者(2018年12月16日)
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人の世で選ばれる者がいる 羨望の目で見つめられ 人前に並んでいる者達がいる ナザレ村出身のキリスト・イエスが招いた者達がいる 彼が選んだのは 健やかではないもの 小さき者 心の貧しき者 誇らしげに並んでいる者は一人もいない キリストが選ばれたもの達に知らせたのは福音 福音とは嬉しいお知らせのことである 希望がない人に 与えられ…
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- 自分への説教(2018年12月02日)
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身の回りに苛立つ人が居る その性格を直して貰えればいいのだが 大概ムリです 指摘すればほぼ争いになる 昔の殿様や王様ならそんな人間は地下牢に閉じ込めるか殺してしまう 余裕のある会社はそんな人間を遠隔地に飛ばす それが出来ない人はどうしたらいいのだろう そんな人には近寄らない事だが 家族や会社や近隣だとそうもいかない 我慢しか残らない でも…
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- 自分が大勢(2018年11月18日)
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椎の実 ハゼの実 花水木の実 この季節 散歩道に木の実が一面に落ちています 「ごめん」踏んで歩きます 昨年のままでいいのなら木の実も草の実も一粒でいい 樹齢千年の木は千年に一ケ実を結べばいい 一人っ子の家族が続くとやがて人類は一人になる 同じものが二つ以上在る理由は何だろう 同じ考えの者が集まると楽しい 同じ考えや感じ方の人と出会うと幸せにな…
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- からす瓜(2018年11月04日)
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まずいので人は食べません 悪食の烏も相手にしません 正しくは烏瓜でなく唐朱瓜だといいます <在る>と言うことには意味か役割が必要です 目に美しいバラ 秋になると遠くまで良い香を届ける金木犀 美味しい果物は鳥獣だけでなく虫も好きです 虫も寄りつかない人がいます 忘れられて生きている人がいます 何の役にもたたない<いる…
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- 秋の野をゆく(2018年10月21日)
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秋は懐かしい人に出会う季節 皆何処かの世で出会った人達だ 散歩道で私を出迎えるのは 行く先々をホバーリングして現れる赤トンボ 土色の目立たない体を撥ねてみせるクルマバッタ 道端に居並ぶのは千の花束 万の笑顔 枝もたわわに実をつけたアカマンマもエノコログサも みな功成り名遂げた者ばかり 一輪一輪が充分に美しいのに 数えきれないほど花を咲かせて…