トップページ ≫ 社会 ≫ NISAは証券課税倍増の対抗策になるか?
社会
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今、証券会社や銀行が顧客に熱心に勧誘しているのがNISA(ニーサ)と呼ばれる「少額投資非課税制度」適用口座の開設。来年から株式や投資信託の譲渡益や配当、分配金への課税が10%から20%(復興税が加算されるので正確には20.315%)に跳ね上がる。それに対する救済措置なのか、年間100万円までの新規投資には譲渡益、配当、分配金すべてを非課税にしようというものだ。
平成26年から10年間実施されるが、毎年100万円までの投資の非課税年限は5年。だから平成26年に買った分は平成30年末までに売らないと残った分は通常の株式口座に移すか、平成31年分のNISA口座に送り込むことになる。その分だけ31年の非課税枠は小さくなる。この時点での価格(26年取得時より安いのが普通)が移転先での取得価格とされる。
来年から始めて途中で売らなければ、平成30年には最大で500万円の非課税投資残高を持てるわけだ。ある年度内に売買を繰り返すことは可能だが、買いの合計金額は100万までとされる。
年間100万という制限つきながら非課税というのは魅力だ。ただ、うまい話には裏がある。株式や投資信託は必ず儲かるものではない。従来の口座なら、ある銘柄の売買で損失が出たら、他の銘柄での儲けと損益通算ができる。NISAでは口座間ばかりでなく、口座内でも通算ができない。通算した結果、年間で損失が出た場合は、その後3年間に渡り損失を繰り越すことができるが、NISAでは不可能だ。
また、NISAは1人1口座しか開設できず、いったん開設すると、自分にとってもっと有利な他社の口座があっても4年間は移れない。だからこそ証券・銀行各社が顧客の囲い込みに必死なのだ。
でも、各社のNISAパンフを見てもいまいちわかりにくい。投資家サイドのいろいろな事情に考慮が足りないようだ。パンフからは毎年100万ずつ投資するのが当たり前のように思えてくるが、たとえば、最初は10万円で株式に新規投資してもよいのだ。一定の値上がりをしたら、売って他の銘柄に乗り換える。それを繰り返し、買い合計金額を100万以内に抑える。増加した元本を手に翌年も同様の売買を繰り返す。
実際はそんなに順調に売買を繰り返せないとしても、これに近い投資法はできるはずだ。こういう客は、投資信託しか扱えない銀行はもちろん、証券会社にも歓迎されないのかもしれない。証券・銀行が望むのは、毎年100万円ずつ投資信託を買ってくれるようなお客だろう。そういう人たちに最も向いている制度であることも確かのようだ。 (山田 洋)
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