社会
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日本各地でクマが人里に現れ、死傷者も続出している。動物園で見たクマの威圧感に驚き、出くわしたら死んだふりをするしかないと私は思っている。でも、クマと素手で闘った格闘技者がいるのだ。
その映像が残っているのは米国の黒人空手家ウィリー・ウイリアムズ(2019年に67歳で没)。196センチ、100キロの体格で、プロレスのアントニオ猪木や前田日明とも対戦した強豪だが、相手は300キロ超の巨大クマ。映画『地上最強のカラテPART2』の中で、突き、蹴りを繰り出し、堂々と闘っている。対戦途中で映像が終わっているのは残念だ。「クマはサーカス用に飼いならされ、爪や牙もなかったらしい」との声もあるが、対戦した勇気は評価したい。
寸止めの演武ではない実戦的な極真空手の創始者・大山倍達(1994年に70歳で没)の孫弟子のウイリアムズだが、クマとの闘いでも大山が先行している。猛牛との試合で評判を得た大山はさらにグレードアップを試みたのだ。
彼の著書『地上最強への道』(ちくま文庫)によれば、北海道の新聞社も一枚加わって、アイヌのクマ祭りの余興として企画され、動物園から老齢で小さなクマが提供されることになった。ところが選ばれたのは大きな若いクマだった。回し蹴りを狙っていたら、クマが怒り、牙を光らせて向かってきた。これは勝ち目がないと悟ったら、突然の中止命令が出た。時間にして2,3分だった。この一戦の映像はない。
大山を一般的に有名にしたのは原作が梶原一騎の雑誌連載漫画『空手バカ一代』(講談社KC)だ。虚実をないまぜた波乱のストーリーが大人気を呼び、単行本化されると何回も判型を変えて再刊行された。1980年代末に3回目の刊行の担当になった私は池袋の極真会館に出向いた。空手家として神格化されていた彼は、それを意識したかのような話し方、立ち居振る舞いだった。たびたび会っていると、意外に細かいことを口にするようになった。その落差が面白く、人間味すら感じたものである。
山田洋