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新着記事
- 枯葉と手紙(2013年11月13日)
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往年の名ジャズシンガー〝ナッキンコール〟が枯葉を唄った時、私は日本の詩人達が晩秋を書きつづったどの詩よりも深い哀愁をおぼえた。というより人生の哀感を覚えたことはなかった。 そんな枯葉の季節を味わっている時、私宛に一通の手紙が届いた。純白の封筒に墨のように黒いインクで私の宛名が書かれ、裏には几帳面な字で国崎千恵子とか書れていた。少なくとも私は胸のときめきを抑…
- 私の横浜 そして大観(2013年10月18日)
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ずっと以前から、横山大観という画家に興味をもっていた。 明治元年生まれの大観はれっきとした水戸藩士の子として生まれたが、その後、横山家の養子になった。私は何よりもこの高名にして偉大な画家の画風に憧れをもち続けてきた。そこにはやはり、本物の東洋が表現されているからだろうか。どこかで人間を大きく赦している画風なのだ。怒りの表現を隠さない「屈原」にしても、怒りの…
- 交流の妙(2013年10月08日)
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彼と初めての出会いは彼の親友の主催するパーティーだった。色白の端正なマスクをして一人一人のスピーチを聞きながら、よく頷いている。コミュニケーション術の一つに3回のうち1回は頷けというのがあって、彼はまさしくそれを実践しているのだ。簡単なようで修行をつまなければなかなかできるものではない。まして、そこに少しでもわざとらしさがあったら嫌味だ。彼にはそれがなかった…
- 般若面と山(2013年10月07日)
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正面の壁に、よく見かける派手な富士山がゆれあがる湯気の向こうにそびえていた。夕方のことで五メートル四方以上もある湯船は満員の盛況。ところは上野駅に程近い銭湯。あまり長湯をしない習慣の俺は、お湯から出て三つだけ空いていた「カラン」の一番左にあった洗い場用のちっちゃな木椅子に腰を下ろし、山で10日もためてしまった垢を落とし始めた。そこへシャッターを下ろしてきた…
- 若者たちとの交流(2013年10月03日)
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最近、すぐれた若者達と交流をもっている。 私にとつて若者とは30代、40代の人達だ。 20代は青過ぎる。私と交流をもっている若者達は皆、理想をもっている。しかも地にしっかりと足をついたリアリティに富んだ理想だから嬉しい。 すべて理想は現実的であることによってのみ、その高峰に到達するのだ。 そのうちの一人、岸町勇太君は青山学院をでて、アメリカの公認会計…
- 孤丘忘れがたし(2013年09月26日)
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そば処「孤丘」は、私の心をとらえてはなさなかった。先述した通りだ。二ヵ月前、私は「孤丘」を訪ねた。きれいなパンフレットが目についた。手にとってみると、「孤丘」のいわれが書かれていた。そこには、「孤丘の誡め」とあって、立身出世しても他人から恨まれないようにせよ。常に謙虚な心を保てということが記されていた。出典は、中国春秋時代の列子。さらに孤丘とは昔の中国の村の…
- 孤丘とキツネ(2013年09月10日)
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「孤丘」という名に魅かれて、いつの間にか三年という歳月が流れていた。「孤」が「狐」と交差して私の眼球から脳裡へと焼きついてはなれないのだ。それはあたかもカクテルのように交わり合っている。さいたま市という、埼玉では一番の都会の片隅にその店はあった。否、もちろん今もある。小高いスロープの中程に高級感を漂よわせてその一軒屋が「孤丘」。そばの店だ。池波正太郎を気取る…
- 観月(2013年07月28日)
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連日のゲリラ豪雨である、 晴れていたと思ったら、いきなり上空が真っ暗になり、遠くから雷の音が響いてくる。そして、どしゃぶりの雨が地面を叩きつけるのだ。 それから数時間。 雨が止み、空を覆っていた雲が取れて、いつの間にかお月さまが浮かんでいる。 まんまるではないけど、妙にかわいらしい月が、下界に愛嬌を振りまいている、ように見える。 観月…
- 愛と友情と裏切り(2013年07月18日)
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人生は愛と友情と裏切りだそうだ。太宰治は「大人とは裏切られた青年の姿をいう」とまで書いた。宮沢賢治の力作「銀河鉄道」が書かれた動機も賢治が誰よりも信じていた親友からの裏切りだったという。 アメリカで最も霧の深い都市といえばサンフランシスコだと思うが、昔、このサンフランシスコを舞台とした政治劇が映画化されてかなりの評価をえた。 市長、そして側近中…
- 爪を切るということ(2013年07月12日)
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どうも爪切りが苦手なのである。 不器用なのだろうな、どうも奇麗に切れないのだ。 爪を伸ばすのが嫌いなので、ついつい深爪し、酷い時は切り過ぎて出血させてしまうこともある。 爪が伸びるスピードというのは、健康な成人で1日約0.1mmなのだそうだ。 50代を過ぎるとだんだん爪が伸びるスピードは落ちてくるらしいが、その分厚みが増すらしい。子どもの頃、祖父が縁側…