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コラム …男の珈琲タイム
大雪。私の心は賢治のふる里、花巻に飛んでいく。
「世界でお星さまが一番近いのが花巻です」。花巻からさいたまに引っ越ししてきた小学生が私に言った。
そういえば花巻に舞い散る雪にはみんな雪の精がひそんでいる。というより雪そのものが雪の精といっていい。
島崎藤村は「雪の純白は名状しがたい冬の焔」と表現したそうだが、私には賢治の魂のように思えた。賢治の魂が雪の華となり雪の精となり大地に舞い落ち、そして再び大地にしみこみ、やがて水蒸気となって空に還っていくような、そんな幻をみている私がいる。
賢治の「雨ニモマケズ、風にもマケズ・・・」は賢治の詩ではなかった。37歳で逝った賢治は自分の死期を予感し、宇宙に於ける理想の生き方を深い想いと願いをこめて手帳に綴ったのだ。
賢治は詩人というより哲学者であり、宗教家でもあった。銀河鉄道の夜は、友の背信により深く傷ついた賢治が宗教的な境地から書いたのにちがいない。一方で日蓮の教えを学び、さらにその教えを深めた宗教家の田中智学に賢治は傾注した。昭和7年、満州国の建設にあたった関東軍参謀石原莞爾も田中智学が宗教上の師だった。
私は大雪の日、花巻を想い、賢治を慕い、賢治の哀しいほどの人生を感じていた。歌人、詩人、哲学者、宗教家、童話作家、満州国等々・・・。私には想いがあってもいまだに宮沢賢治の深さを知らないでいる。唯、「皆の幸せがなかったら一人の幸せはありえない」という賢治の考えだけはなんとなくわかるような気がするだけだ。
(鹿島 修太)
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