トップページ ≫ 社会 ≫ ゴミ屋敷、耕作放棄地に見る土地所有権絶対思想の破綻
社会
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管理放棄の問題
先日テレビのワイドショーで神戸異人館付近の幽霊屋敷を取り上げていた。元イラン館であったものが阪神大震災で倒壊しそのまま放置され、市の文化財指定も取り消されたもの。指定文化財であるので復旧費用の90%は神戸市が負担するという好条件にもかかわらず放置されたので、今ではその指定も取り消された。
市は固定資産税の滞納を理由として競売にかけたが応札するものがいなかった。建物解体撤去と整地に相当の費用がかかるこうした物件ではその費用を土地価格から控除すべきであるが、鑑定評価額(1億円余)が高すぎたのではないか。他にも全国には住宅地の真ん中にゴミ屋敷等放置された空き家若しくは空き地が無数に存在し近隣住民の頭痛の種となっている。
耕作放棄地についてもこれに似た問題があって、雑草が繁茂すれば近隣に迷惑だし灌漑にも支障がある。
これまでの土地所有権絶対の法思想が時代遅れとなったのだ。都市計画上想定された目的に使われない土地は地主にしかるべき利用を促しそれができなければ自治体に売却若しくは譲渡させるか、或いは所有権には社会的義務が伴うことを法律上(できれば憲法で)明記し、その義務を果たさなければ所有権を剥奪する制度を設けるべきだ。
都市景観問題
近年記憶にあるだけでも国立市大学通の高層マンション問題(高層マンションはこの通にふさわしくないと国立市及び住民が主張)、吉祥寺の漫画家楳図かずお氏の住宅問題がある(奇抜なデザインは街の景観にふさわしくないと近隣住民が主張)。こうした問題はオレの土地に何を建てようが、どんな色を使おうが勝手だろうというわけで、都市景観は市民共有の資産であるという観念が乏しい上に、法的規制が整っていないために生じる。
テレビは滅多に見ないが、世界遺産等美しいヨーロッパの街並みを紹介する番組は好きだ。それを見ると市民一人一人が景観を誇りに思い、その維持に並々ならぬ努力を払っていることがわかる。戦争で破壊された石橋を、元の残骸を丹念に拾い集め復原した例さえある。
国防と水資源問題
近年山林を巡ってこの二つの問題が新たにクローズアップされている。前者は自衛隊基地周辺の山林を外国人に買い占められている疑い或いは将来の懸念であり、後者は外国人特に中国人が水を目当てに山林を買い、野放図に地下水源を採取するのではないかと危惧されている。
山林についてはその上に病害虫の問題がある。つまり病害虫にやられた樹木を伐採焼却してその蔓延を食い止めるにも土地所有者の承諾が必要である。宅地と違って山林は境界の画定も容易ではない。
こうした問題を解決するためには山林は国有にするのがいい。但しいきなり国有化すれば憲法29条(財産権の保障)違反になる。従って現状のタダ同然の山林の固定資産税を100倍程度上げればいい。
それを払いたくなければ国に寄付させるのだ。但し実際に林業等に使用していれば無償若しくはそれに近い使用料で従来の所有者に貸与すればいい。実際に利用している人からすれば払うお金の名目が固定資産税から使用料に変わるだけだ。
国が貸与する場合、目的を林業、牧畜、スキー場等のリゾートに限定することだ。自家用を超える水資源採取は認めてはならない。
そうすれば投機(何年も高い固定資産税を払って放置するとは考えられない)若しくは水資源目的で外国人が買うことはなくなるはずだ。原野商法も成り立たない。
国防問題に関しては基地周辺の土地所有者に対価を払って立ち入り禁止とするのも一案だ。
山林国有化にはもう一つのメリットがある。公共事業の際、地主の同意も用地買収費も要らなくなるので公共事業費は劇的に減少し、工期も大いに早まる。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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