社会
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先月下旬。そぼ降る春の雨の中、歌手の八代亜紀さんのお別れの会が執り行われた。この会の終わりを合図としてか、ためらいがちな今年の桜も、次々と咲き始めた。
八代亜紀さんの歌声には、独自のビブラートがかかっている。ハスキーボイスと相まって、唯一無二の存在感で知られる亜紀さん。この歌声に倣おうと、ビブラートを酷使して悪戦苦闘する人は多い。亜紀さんのビブラートに個性があるのはもちろんのこと。豊かな表現力を支えるためには、揺るがぬ技術も必要だった。
画家でもある亜紀さんの歌声は、絵画的とも言える。肖像画も得意としていた亜紀さんが歌で描く世界には、緻密な職人技が光っている。一曲一曲の歌の主人公の全体像から内面に至るまで、的確に表現が出来たのも、鋭い観察力と描写力のなせる技だ。亜紀さんのビブラートは、高い技術と彼女自身の奥深い愛との結晶と言えるだろう。
一見エキゾチックな八代亜紀さん。しかし、その生き様や歌声は和顔そのものであった。「亜紀さんのような人が増えたら、世の中はもっと良くなるのに」という声もある。亜紀さんの愛はこれからも、世の中の不条理の分だけ、時にビブラートとなって、人の心に届き続けてゆくことだろう。
葉桜こい