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6場所連続休場からの進退をかけた復帰、千秋楽の全勝対決、それを制して45回目となる優勝。全ては揃っているのだが世間に祝勝ムードは皆無。身内ともいえる相撲界関係者からも擁護する声は全く聞こえてこない。
既に言い尽くされている感はあるが、やはり千秋楽一番のあのかちあげは危険だ。スローで見ても相手の顎を狙ってエルボーを入れており相手が脳震盪を起こして不測の事態となる危険性すらあったのではないか。禁じ手ではないので、反則とはならない。ただ本来相撲の技としてのかちあげは、相手の上体を起こして自分優位の体勢を作る為の一連の技術であり、今回そうした用いられ方ではなかったのは明白だろう。
若き日の白鳳は昭和の角聖、双葉山の名を良く口にしていた。絶対にまったをしない、常に受けて立つ相撲は、その後の横綱の理想像、究極の姿として神格化された存在といえ、その人物を敬愛すると発言する事で先人と並び称されるような横綱となり、相撲道を究めていきたいという心からの発言だったように思う。
しかし世間、特に好角家はその言葉を額面通りには受け取らなかった。むしろそうした発言を物欲しげと感じ、言葉ではなく土俵の上で体現すれば良いだけというつれない態度に終始していた気がする。年間最多勝86勝(2009年、2010年)は歴代1位、63連勝は歴代2位と数々の金字塔を打ち立てても、一向にそれに資する賞賛は与えられずいつの頃からか、この横綱からこうした姿勢、発言は消え、今に至る。
北の湖は29歳前後、遅咲きだった千代の富士は34歳前後で誰の目にも衰えが隠せなくなった。両者とも時代の最強を誇ったのは8年程度。屈強な大男同士が年間90番も取る激しい大相撲の世界、この位の年月で誰しもが精神、肉体の両面で限界を迎えるのだろうと考えていた。白鳳はこの地位をざっと13年守っている。驚異的である事だけは間違いない。
引退後は相撲界に残り、親方として後進の指導に当たるという。長く大相撲を支え続けたこの大横綱に相応しい引き際を自身で決断してほしいと願うばかりだ。
小松 隆
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