トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 「姓」のない日本・窓に鉄格子の中国 外交評論家 加瀬英明
外交評論家 加瀬英明 論集
中国や韓国では何千年にわたって、“姓のない者”は想像もできなかった。中国は「百家姓」といって姓が100しかないはずだが、実際には500あまりある。大きな一族は林と陳で、それぞれ1億人を越えている。
中国と韓国では同姓の者が結婚することは、絶対のタブーとされてきた。何千年も前に先祖が同じだったというだけで、男女は恋愛も、結婚することも許されない。中国人や韓国人は、日本人が従兄弟、従姉妹や同族間で結婚するのを、野蛮だとみなしている。
韓国では同じ先祖の血をひく者の結婚を、1998年まで法によって禁じていた。恋愛することもできない。韓国には姓が300あまりしかない。ただし、金姓のようにごく一部の姓にいくつかの流れがあって、血統が違えば同姓であっても結婚できる。
日本では明治新政府が明治3年に、「平民苗字許容令」を発した。ところが、庶民が姓がない生活に慣れていたので、姓を名乗ろうとする者が少なかったために、5年後に「平民苗字必称令」によって義務づけている。
日本では原則的に公家と武家の外は姓がなかったから、東南アジアと似ている。インドネシアをとれば、かつて大統領だったスカルノも、スハルトも姓がない。スカルノ大統領の長女のメガワッティ・スカルノプトリも大統領となったが、“スカルノの娘のメガワッティ”を意味している。タイには姓があるが、西洋に倣ったものだ。
日本を中国と朝鮮半島とくらべれば、異なっているところのほうが多い。中国や、香港や、台湾を訪れると、住居の窓に砦のように、鉄格子がはめられている。日本の家屋には縁側があって開放的であるところが、東南アジアの家と共通している。
日本人は私というときに、鼻を指す。中国や、韓国では胸を指す。江戸時代に「お歯黒」といって、成年女子が歯を黒く染める習慣があったが、東南アジアのものだ。このような習慣は、中国や、朝鮮半島に存在しない。
私はインドネシアのジャワ島を巡った時に、畦道で女性が裾をたくしあげて、立ち小便をするのをみて、なつかしさを覚えた。先の大戦中に小学校の低学年として長野県で過ごしたが、そのような光景を目にした。中国でも、韓国でも、ありえないことである。
(徳の国富論 第6章 「指導者」や「独裁者」がなかった日本語)