トップページ ≫ 社会 ≫ こんな時だからこそ考えてみたい水道水の役割 ➀
社会
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新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。日本も例外なく感染が確実に広がりつつあり、ついに緊急事態宣言も出された。一方で、アメリカ、スペイン、イタリア等の感染者数が上位の国々の現状と比較すれば、感染拡大のスピードはゆっくりとしたベースであり、いわゆる3密(密室、密集、密接)の一つ一つの全てを避けることを、国民1人1人が確実に守ることができれば、収束に向かうことは間違いないことのように思える。だが実際には、3密を避けているとは思えない多くの人も見かける。意識の低い人が、まだ、かなりいる。それでも、感染拡大スピードがある程度制御できているのは、3密を避けることを徹底している人が多くいることに加えて、水道水が一定の役割を果たしていると筆者は考えている。
日本人が当たり前に持っている衛生観念が感染拡大にブレーキをかけていると思うからである。そして、その衛生観念そのものは、日本の水道という安全な水がなかったら、ここまで醸成することはできなかったであろう。仮にそのような衛生観念が低い状況下の中だったら、今回の新型コロナウイルスも、もっと速いスピードで、日本中に拡散したといえる。いつでもどこでも、安全な飲料水である水道水を使うことができるから、頻繁に手を洗い、うがいをして顔も洗うことができ、例え新型コロナウイルス等が手や顔についたとしても体内に入る前に除去でき、かつ、日々の掃除、洗濯、入浴等、衛生的な暮らしを保つことができる。このことが、水道の原点であり、歴史も証明している。
明治初期、鎖国明けの当時の日本人の気持ちは、今と同様に多くの不安を抱えていたのだろう。外国から、外国人と共に、それまでには無かった良い物、悪い物がたくさん入ってきた。その悪いものの代表が、コレラ等の水系伝染病である。
江戸時代にも水道はあった。江戸っ子は、「水道の水で産湯(うぶゆ)を使った」と自慢していたという話もある。2020東京オリンピックに向けて、都心の再生が行われ、たくさんの江戸水道の遺構が発掘されている。しかし、この江戸の水道では、コレラ等水系伝染病には対抗できなかった。横浜、函館(1889)~長崎(1891)~大阪(1895)~東京(1898)…と開港都市に次々と近代水道が誕生した背景がそこにある。衛生的な暮らしを確保し、水を汲んだり、運んだりする不便さからの解放により、国民、特に女性や子供たちは、他の仕事により専念でき、学校へ通うこともできるようになった。そして同時に、水系伝染病は、水道普及地域で確実に抑え込むことができたのである。
水上清悟