社会
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NHK大河ドラマは放送開始から丸60年ということで、中世と近世のヒーローたちはほとんど取り上げられてしまい、従来なら憎まれ役だったような人物さえ主役になっている。今年の徳川家康もかつては「たぬき親爺」と言われ、豊臣秀吉や織田信長よりもかなり不人気だった。昨年の『鎌倉殿の13人』の北条一族は、源頼朝が樹立した武家政権を巧妙に乗っ取ったぐらいの印象しかなかった。このドラマの主要人物の一人、梶原景時にいたっては、頼朝に取り入り、源義経をはじめ邪魔になる人物をざん言によって陥れた大悪人とされてきた。
だから漫画『巨人の星』などの原作者がペンネームを景時にちなんだ梶原一騎にしたという話には首をひねったものだ。この人はスポ根漫画にも独得の反逆心を盛り込み、「正義は必ずしも勝たない」というような逆説的ストーリーを作るところがあり、あえてこの名を選んだのかもしれない。
景時と義経の対立は平家軍との屋島、壇ノ浦の戦いで決定的になった。自ら真っ先に飛び出して行く義経の戦法は華々しい戦果をあげたが、景時が学んだ兵法や軍法から逸脱していた。参謀総長のような立場の景時は鎌倉にとどまっている頼朝に戦いの経過を報告した。これにより源氏の武士たちは恩賞にあずかることになる。当然、義経に関する報告もあった。これがざん言とされたのだ。
歴史学者や時代小説の作家たちは、一方的に景時の非を主張してはいない。『鎌倉殿の13人』の脚本を書いた三谷幸喜はさらに踏み込んで「景時は義経の良き理解者」としているが、こういう解釈もできるのが面白い。泉下の梶原一騎も「我が意を得たり」の思いか。
山田洋
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