社会
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有事のドル、また米国の政策金利引き上げからきっかけに急速な円安が進んでいる。一時123円/ドルを突破し、これ以上の円安局面もあり得る状況だ。長年円安は日本経済に取って望ましいと半ば常識のように語られてきた。自動車に代表される大企業の輸出に対して好影響が大きいと幅広い層から認識されてきたからだろう。
反面、国民の暮らし向きに焦点を当ててみると、輸入品全般の値上げは無論、小麦、食用油といった原材料、また石油、電気料金などあまねく値上げとなり家計への負担は大きい。
一方、発足当初から令和版所得倍増計画を打ち出した政権の方針と相反して、給与所得が上向く兆しは感じられない。一概にこれだけを物差しには出来ないものの、この約20年間で一人当たり名目GDPに関して日本は世界第2位から世界24位になった。これもまた厳しい現実として受け止めざるを得ない。
資源に乏しく、輸入に頼らざるを得ない国状、円高であればその輸入品の購買力が相対的に上がる点だけからシンプルに考えても、長く続くステレオタイプの円安礼賛にはどこか違和感が付き纏う。
また為替レートを主因に下支えされた輸出に有利な貿易環境から、企業から強い技術力に裏打ちされた、世界市場で支持されるような製品が生み出されてくるとは考えにくい。むしろその動機付けを阻害しているとさえいえるのではないか。この点については野口悠紀夫一橋大学名誉教授が長年指摘されている円安の弊害についての言説に頷くところが多い。
この10年続いた日本の金融政策についても一考する時期が来たと考えるが如何だろうか。為替レートに対する姿勢もまた然り。
小松隆