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コラム …男の珈琲タイム
前述したが私には忘れえぬ三人の恩師がいた。一人は教育者だがあとの二人は名を成した実業家だった。三人の共通点はみな筆まめだった。お会いした人にはすぐに礼状を書いた。特別の場合を除いて極、短い文章だった。しかし、その短文には感謝と愛情がずっしりと秘められていた。「文を見れば、だいたいその人物がわかる」というが恩師の共通の考えだった。例えば「またお会いできる日を楽しみにしております。今から心がときめいております」という風だった。年賀状には必ず添え書きをした。のっぺらぼうの賀状はそのまま人柄を表わしている。のっぺらのあいさつ。しかも印刷だけのものだったら、絶対に出さない方がいい。失礼、非礼とまで言って私に諭してくれた。とにかく、短く、相手の心を打ち、響かせる。すなわち妙味であるとまで教えてくれた。贈りものについても、くだらんものは絶対に贈ってはいけない。贈ったためにすっかり信用まで失った者が、かなりいるものだというのが口癖だった。名を成す人はやはりどこかが違うのだと確信をしながら生きてきた。今年もたくさんの賀状を頂いた。泉下の恩師に伝えたら、どんな顔をするのだろうかと想いをめぐらした。イヌ年。ワンチャンス。人生はワンチャンスをどう生かすかだ。そしてワンチャンスをワンダフルにもっていけたら、こんな素晴らしいことはない。賀状も手紙もみんな成功へのチャンスを秘めている。賀状、恐るべしだ。
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