トップページ ≫ 社会 ≫ 給付金事業から五輪運営まで仕切る会社
社会
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ここ数年で負のイメージの話題を最も多く提供してきた企業は広告業界トップの電通か。新型コロナウイルスがらみでも、国の持続化給付金事業で委託先の一般社団法人を隠れ蓑にして電通が再委託され、さらに電通子会社などに外注が重ねられていた事実が明らかになった。
2015年12月には24歳の女性新入社員が自殺し、翌年9月に労働基準監督署が過労自殺だったとして労災認定した。この件での会社の対応が遺族の感情を逆なでし、世間からはブラック企業との見方をされるようになった。
この頃、電通の社長が密かに首相官邸に呼ばれ、安倍首相から直接に注意を受けたという。事件によるイメージ悪化で、同社が深く関わる東京五輪業務に支障をきたす恐れがあると指摘されたようだ。これは政権と電通の関係をうかがわせるとともに、その後の展開を見れば首相の懸念が杞憂ではなかったことが分かる。
東京五輪は電通が全て取り仕切っていると言える。JOC(日本オリンピック委員会)や五輪組織委員会の人員は東京都や各省庁から寄せ集められていて国際イベントの知識に乏しく、電通からの出向者たちが実務を担っている。招致活動からスポンサー獲得、メディアへのPR活動、開催までの関連行事、そして本番での管理進行まで。そこに他の広告代理店はまったく入り込めないのだ。
この辺の事情は『電通巨大利権』(本間龍・著 サイゾー刊)に詳述されている。著者は電通に次ぐ業界2位の博報堂で営業担当だった人で、広告業界の内情に通じている。テレビCMでシェア35%を占めるなど業界のガリバー的存在の電通に対しては、広告収入に頼るマスコミ各社は批判的報道をしにくいという。電通がブラック企業として悪評が高まっても、途中で五輪業務から手を引かせるのは事実上難しいと見ている本間氏も、動員される11万人の無償ボランティアについては『ブラックボランティア』(角川新書)にて強い疑問を投げかける。
新型コロナウイルスのために1年延期となったが、真夏の猛暑の中で開催される五輪では、選手ばかりでなく会場で働くボランティアにも危険がともなう。その労働に対しては無報酬。交通費補助の名目で1日1000円のプリペイドカードが提供されるだけで、それを超える交通費や宿泊費は自己負担だ。過去の五輪でも無償だったからというのが五輪組織委員会の言い分だが、すっかり商業イベントと化した五輪で、ボランティアは経費節減のために利用されているとしか思えない。
リオデジャネイロ五輪ではボランティアが1週間で3割も消えてしまい、大会運営に支障がきたしたという。東京では同じような事態の可能性は少ないかもしれないが、1年後の開催自体の可能性も下がり続けている。
山田 洋
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