トップページ ≫ 社会 ≫ 水道法の改正と水道事業の民営化の問題点⑤ ~水上清悟~
社会
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ここまでに議論してきた水道事業の抱えている課題や、現状、立ち位置等の分析を基に、本論の最終目的でもある今回の水道法の改正要点、すなわち改正水道法の示す水道事業推進基盤の強化に向けたアプローチである、「民間活用の推進」及び「広域連携の促進」について言及をしていくこととする。
これまでに、水道事業の原点や、与えられている役割、水道事業経営の特徴について整理をしたが、そのような水道の経営上の特質を持った事業を、だれがどのようにやることがベストなのか、先ずは、「民間活用の推進」に関して、その代表的な形態ごとに可能性、適応性を考えてみる。
形態の一つ目は、世間に物議を醸した水道の完全民営化についてである。民間企業の最大の特徴は利潤追求と投資コストの早期回収ということだと認識している。ということは、第一に不採算な地域あるいは不採算な水道管路線(都市部では、100mの水道管を布設すればお客様との接続(新規契約)を多数に見込めるが、地方では1km以上も水道管を布設してもたった1件のお客様しか望めないところもある)は切り捨てなければならない。また、水道使用者の期間の公平を保つためには、投資コストを投資した施設の耐用年数という長期にわたる期間で、お客様の水道料金により回収をすることが望まれるが、このことは民間企業になじむのだろうか?加えて、市町村が経営する水道事業では発生しないコスト、すなわち、一般管理費(本社の維持費用や役員報酬等)が増加する。また現在、かなり問題視されている比較的新たな課題である水道施設の老朽化であるが、その更新事業費は、新規顧客を望めない、すなわち収入増がない(あるいは収入が減る)中での投資ということである。このことに対処するためには、当然のことながら事業費をどこまで削減できるかということが重要なポイントである。民間活用によって、ほんとに更新事業費を事業体が実施するより縮減し自らの資金によって実施できるのか?その根拠は何なのか? 更に国や県の裁量で、あるいは新たに設置することも検討されている規制機関により、水道料金の値上げが思うように認められない事態も十分に予想できる。こうしたことを考え合わせれば、民間企業が、給水区域内の全ての住民や社会活動を行う人々のために、水道による衛生かつ快適な水使用環境を提供し続けることができるのか? 質が高く安全で安心して飲める、使える水を、安定的に将来に渡ってリーズナブルな価格で供給し続けることができるのか? そうした状況下、特に経営の窮地に立っている中小規模水道の経営に手を上げる民間企業が果たしているのか?ということも含めて、はなはだもって疑問である。 続く