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コラム …男の珈琲タイム
『あしたのジョー』、『おれは鉄兵』、『のたり松太郎』など多くの人気漫画の作者、ちばてつや氏(73歳)が秋の叙勲で旭日小綬章を受章した。折しも全国を巡回開催されてきた「デビュー55周年記念 ちばてつや原画展」が11月17日から池袋の西武百貨店別館で始まった(27日まで)。『あしたのジョー』の原画100点をはじめ、初期作品から最近作まで計250点以上の原画が展示され、たいへんな人気を呼んでいる。
ちば氏は今年7月に日本漫画家協会理事長に就任したが、7年前から宇都宮市の文星芸術大学美術学部マンガ専攻の教授として、学生たちに漫画の手ほどきをしてきた。私は以前に漫画雑誌の編集部に在籍し、ちば氏を近くに見てきたこともあり、漫画指導の面でも卓越した人だと強く感じていた。
講談社の「週刊ヤングマガジン」と「モーニング」が1980年に創設した「ちばてつや賞」は漫画家への登竜門のような漫画賞で、受賞して大成した漫画家は夥しい数になる。両編集部がそれぞれヤング部門と一般部門で選んだ候補作の中から、ちば氏自らが大賞、準大賞から努力賞まで何段階もの賞を決める。その際、1つ1つの受賞作に、実にていねいな選評を細かい字でびっしり書き込む。作品のマイナス点についても、修正の具体的アドバイスを提供。
表彰式後のパーティーでも、受賞者たちと作品について話し合う。暴走族出身風やオタク系も入り混じった受賞者たちが、ちば氏の意見を求めて行列を作るのも珍しくない。「何度も何度も読んで良いところを探す。一見つまらないけど、何か良いものを持っているかもしれない。そういうものを探す。まだ
新人だから表現がちょっと下手だったりするけど、良いものを持っているから今後伸びるかもしれないと思うと、どれも落としにくい。それで苦しむことはよくあるね」
そう語っていたちば氏のもとから、さらに有望新人が続々輩出されることを期待したい。ただ、教育に時間が取られ、新作が少なくなりそうなのは痛し痒しか。
(山田 洋)