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浦和駅西口、高砂小学校西門(勇愛門)向かいのビル1階に、赤い立て看板の「居酒屋だるま」が目に入ってくる。昭和55年オープンして浦和の地で35年、地元から愛されている老舗の居酒屋である。お店を始めた当時、浦和駅西口には伊勢丹の姿もなかったそうだ。安くて美味しく新鮮、その上ボリュームもある料理を提供してくれる。魚屋をしていたという店主は食材を選ぶ目とその味にはこだわりがあり、季節の料理は逸品だ。その日のおすすめ料理が白いボードに手書きで書かれている。浦和駅から徒歩5分程度の場所にあるが、お客は近隣の常連客が多く繁盛している。30年以上通っているお客もいるという。店内は横に細長く、4人掛けのテーブル席が1つで、12名程度の横並びのカウンター席というつくりだ。
35年の月日には多くの人間模様が繰りひろげられている。カウンターで49歳の紳士と隣り合わせたのだが、聞けば十数年ぶりの来店という。地方に単身赴任となっていたが、ようやく戻ってきたばかりだという。当時は浦和駅東口にパルコなども無く、周辺が変貌していたので浦和駅に降り立ったとき東も西もわからなくなってしまった。独身時代からほぼ毎日のように通い、慣れたはずのお店になかなかたどり着けずに戸惑ってしまったと話していた。結婚してからも夫婦で訪れ、美味しい料理に舌鼓を打ちながら過ごしてきたお店だそうだ。突然の帰省に店主の粋な計らいがあった。こっそり電話を入れ、その紳士の息子を呼び出し引き合わせたのだ。諸事情があり、なかなか会うことができなかった親子で会ったため、久しぶりの再会に大変感激していた。30歳になるその息子もまた父親が愛したこの店で常連となっていた。隣の席で酒を交わし合う親子の姿に目が細くなった。口数の少ない店主だが、その親子の様子を見ていたこちらに向かってつぶやいた。「あの子が生まれる前からお店をやってきた。親子で長く付き合ってくれることは本当にありがたい。店を続ける励みになるよ」
店主の人柄と旨い料理、うまい酒に集まる人たちの憩いの場「居酒屋だるま」で歴史の1ページを刻んでみてはいかがだろう。
居酒屋だるま さいたま市浦和区岸町4-24-1
営業時間17:30~23:00 定休日 日曜日
電話048-822-2931
(多田 清成)