文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
枚の落ち葉の美しさに立ち止まり拾い上げた
見上げると桜の古木は鮮やかな衣装を身にまとい
午後の日射しに映えていた
そこだけ時間が止まっていた
こんなにも美しい晩年があるだろうか
旅支度を終えた枯れ葉は舞いながら落ちる
地に落ちた葉は幼児に帰り風を待つ
枯れ葉は子供達がいなくなった校庭を走りまわる
春 桜は短い間花ばかりとなり
人々を公園や山里に誘い宴を聞かせた
夏は幾重にも葉を重ね涼しい木陰を作った
樹木は生まれた場所から一歩も歩いたことはない
しかし訪れる虫や鳥の会話で
市街地にはビルがあること
川があること
争いが絶えないこと
町の様子はみな知っていた
十一月枯れ枝となった桜は空の中にいた
古木は昼は雲と話し夜は月や星と話した
三日月は枝にかかり妖精がきて笛を吹き
満月の夜は月の中にいた
星月夜は枝の間に星の花が咲いた
季節が終り誰もいなくなると
桜の古木は天の中にいた
山上村人