トップページ ≫ 社会 ≫ 週刊誌で記録的長期連載の「黒い報告書」
社会
特に埼玉県、さいたま市の政治、経済などはじめ社会全般の出来事を迅速かつ分かりやすく提供。
久し振りに「週刊新潮」を買い、暇つぶしに巻頭から最後まで目を通したら、終了したと思っていた「黒い報告書」が今も掲載されているのを知った。出版社系週刊誌の草分けとして1956年に創刊された同誌で1960年に連載が開始、1999年にいったん終了するものの2002年に再開されていたのだ。中断期間を除いても60年近い歴史を持つわけで、週刊誌では他に例を見ない。
「黒い報告書」は男女の愛憎や欲望が絡んで起きた現実の事件をもとに4ページの読み物にしたものだ。連載開始当初は書き手に新田次郎、水上勉ら有名作家が起用され、その後は各種文学賞の候補作家など新進気鋭の人たちに引き継がれた。中村うさぎや内田春菊など女性作家も加わっていた。1話読みきりで必ず濡れ場が入る。地方で起きた事件では、その地ならではの描写があり、フィクション化とはいえ、現地取材もしていることがうかがえる。
2012年にはテレビドラマ化された。土曜午後のサスペンスドラマなどに共通する題材は確かに多い。1999年の連載中断後に、官能的で優れた作品を集めて単行本化され、連載再開されてからは「新潮文庫」として何冊も刊行されている。現在の掲載作を過去のものと読み比べてみると、官能描写がリアルで濃密になっているのが分かる。色と欲に溺れて犯罪に至るというパターンは不変だ。
過去の書き手の中に私が知っている人が何人かいた。その人たちは、当時私が編集部員だった週刊誌でも書いていたからだ。しかし、「黒い報告書」の主要執筆者だった人に実用記事ばかりを依頼する編集者がいたのには呆れた。男と女のドラマからは縁遠い膨大なデータ原稿から項目ごとにセレクトしていく面倒で面白味のない作業だったが、意外にも手際よく仕上げていた。「さすがプロ」とうなったものだ。
山田洋
バックナンバー
新着ニュース
特別企画PR