文芸広場
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少年がトロッコに乗ると
決まって夏は逃げるように去った
疲れた秋の風がトロッコの林を静かにゆすった
少年がトロッコに乗ると
はるかな祖先や先日まで一緒だった
父も母もトロッコに乗ってきた
少年は嬉しくて目頭が熱くなった
トロッコが500メートルも走ると必ずとまった
少年は我にもどってトロッコからおりて
今きた道に向かってトロッコを押していった
からのトロッコにはもう誰の姿も消えていた
少年はまた明日も、そのまた明日もトロッコに乗った
林の木々は枯れてその木々の合間からも
懐かしい顔の一つ一つが嬉しそうに笑っていた
少年もまたいつの間にか老いていた
つくば林太郎
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