文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
ああ
これは夢に違いない
夢だ これは夢なんだわ
夕日に燃えている林の中で
両手をのべた立ちつくしている女の衣も燃えていた
ああ 燃えている 燃えている
私の半生が 私の苦しみが
その中で私の赤ん坊が笑っている
お母さんが私をみて笑っている
剥げ落ちた天平の壁画の
あの菩薩のような豊かな胸をひらいて
おかあさん私はずうっと子どもでした
あれ
お母さん
朱塗りの門の陰から
鬼の子ども達が私を食べにかけてくる
ほほ
これは夢なんだわ
木の葉が燃えながら焼け落ち
なみだの中から
つもった落ち葉も赤や黄に燃えている
生きているということが
こんなにも明るく美しいことだなんて
私 今まで知りませんでした
こんなにも幸せでよいものなのでしょうか
燃えている 燃えている
焼け落ちた落ち葉が私を廻って
目眩るめくほど明るく
私の苦しみや 悲しみが 記憶が
今一面に溢れ出て
木の葉も私も燃えている
ああ お母さん
これは 夢だ 夢なんだわ
大畑 ヨシオ
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