文芸広場
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母というものは恐ろしい。
実家で洗面所を使った時に、ぎょっとしたことがある。それは、学生時代に絵付けをした湯呑が使われていたからだ。確か、この湯呑は奥にしまい込んだか、捨てた気がするのだが、何故?
この湯呑は、わたしにとって恥ずかしいものなのだ。だって、内側に当時あこがれていたひとを表わすことばを書いてたのだもの。絵付けしちゃう行為も恥ずかしいが、若さゆえの変なノリ。友だちとキャーキャーと盛り上がりつつ描いたに違いない。
でも、それを知ってか知らずか、使うってどうなの?見つけても、ひそかに葬ってくれてよかったのに。
過去の青春の遺物を使用するのはやめてください。
母は、物を捨てることよりも使えるものは使う主義だったっけ。
いつかわたしも、この手の破壊力を息子と娘に行使してしまうのかもしれない。いや、既にしているのかもしれない。
檀 ままこ