トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 埼玉県の高校入試は複雑です(2)公立高校入試編
教育クリエイター 秋田洋和論集
○平成22年度から埼玉の公立高校入試が変わります
今年度(2009年春実施分)の中学3年生が受験する入試を最後に、埼玉県の公立高校入試は、日程はもちろん選抜方法に至るまで大幅にシステムが変わることになっています。今回は、現中学2年生(2010年春受験)以降の受験生向けに、平成22年入試におけるシステムの変化をまとめてみることにします。
○募集人員の割合:募集人員の80%程度が前期募集で合格するようになります
平成21年度までの入試では、例年総募集人員の40%程度が前期募集で合格するようになっていましたが、今回の変更により総募集人員の80%程度が前期募集で合格するようになります。この割合はおおまかな範囲が決められていて、学校ごとに割合を決定することになっています。全日制普通科ではその割合が「総募集人員の50~75%」とされています。伊奈学園総合高校だけは「総募集人員の50~100%」の範囲とされていますので注意してください。専門学科では、理数・外国語・人文・国際文化については割合が「総募集人員の50~75%」とされ、それ以外の学科と総合学科については
「総募集人員の50~100%」と」なっています。
○選抜内容:前期・後期ともに学力検査が実施され、各教科100点満点になります
平成21年度までの前期募集では学力検査の実施はありませんでした(一部の学校では総合問題・作文などが実施されました)が、平成22年度以降の入試では、前期募集では5教科(国社数理英)の、後期募集では3教科(国数英)の学力検査が実施されるようになります。また。従来の入試では各教科の満点が40点でしたが、今後は各教科100点満点に変更されます。これは各教科1問あたりの配点が高くなることを意味しますから、これまで以上に「ミスをしない勉強」を心がけなければなりません。
○選抜方法:「相関評価方式」から「加算方式」へ変更されます
これまで実施されてきた「相関評価方式」とは、学力検査と調査書の学習の記録について、どちらも一定の順位に入っている受験生から合格とする選抜方法です。この方法では、たとえ学力検査で満点をとるなどして他の受験生に圧倒的な差をつけたとしても、学習の記録の成績が悪ければ、第1次選考では合格とはならなかったわけです。それに対して新しく実施される「加算方式」では、学力検査の得点のほか、調査書の得点や面接・実技(実施しない学校もあります)などの得点を合計して選抜する方法です。新制度では、選抜に第1次選抜および第2次選抜という段階を設け、それぞれ得点の重みのつけ方に差を設けることができます(例えば、学力検査の得点:調査書の得点=6:4とするなど)。調査書の記録は、各高校の基準により得点化されます。
図のように、学力検査と学習の記録に基づいて全受験生を振り分け、A領域に入っている受験生から順に合格を決めていく方法。学力検査で満点を取っていたとしても、学習の記録が全受験生の中で中位~下位の位置にいれば、A領域に入ることはできない。
今回の公立高校入試の変更は、基本的には「学力重視」の選抜に流れが変わったことを意味します。これは、前期・後期ともに学力検査が実施されるようになったことでも明らかですが、入試日程が遅くなったことも「中学3年の3学期もしっかり勉強させる」というメッセージと受け取るべきでしょう。
選抜において調査書などが無視されることはありませんが、高校側が「客観的な学力」を知りたがっていることを念頭においた上で、計画的に勉強をすすめていくことが大切になります。
(秋田洋和)
~秋田洋和~
清和大学法学研究所客員研究員。
私立中学や学習塾への教育コンサルタントとしても活躍。