トップページ ≫ コラム ≫ 埼玉の余話 ≫ 地方の帝王 ⑥ 悪女の手先になった市長
コラム …埼玉の余話
D市の市長はあまりにも長い政権のあとになったばかりだったから市民は新鮮な印象をもって迎えた。この市長は高校を出てすぐに役所に入った。税務課を皮切りに福祉、農林、とどちらかというと地味なコースをコツコツと歩んだ。しかし40歳を過ぎた頃から、彼の真面目で実直な性格を上司に高くかわれ、財政、人事、企画と進み秘書課長になった。そこで彼は市長の職務の味を知った。そこから彼の権力への志向が急速に強まったのも不思議ではない。市長に可愛がられ最後はNo.2の助役になった。今の制度では副市長だが。そして遂に前任の市長が辞めた後、無投票で市長になった。そこまではよくある成功物語だが、彼には切っても切れない裏の女がいた。この女性がまれにみる権力志向の悪女だった。すべての権力はこの女性が握った。人事も彼女のサジ加減ひとつで決まった。誰も口を出せなかった。利権は悪質な型で彼女が握った。こんな政権が続く筈がなかった。当局に追い詰められこの市長は二期目を投票日前日で断念。挙句の果ては数カ月後、自らの命を断った。