文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
季節外れの百合の蕾がある
見つけたのは昨年の暮れだ
地表30センチほどの低い茎に
一つだけ蕾をつけて
季節外れの百合は寒風の中で膨らむこともなく
枯れることもなく
年が明けても首を垂れ寒風に耐えていた
季節外れの稲が立ち枯れになるように
育つことはあるまいと
毎日意地悪く見守っていたが
正月飾りが取れた一月十一日蕾の先が少し割れてきた
この世界に
誰か出会いたい人がいるのだろうか
蜂も蝶も来ない季節
いるとすれば虫や人間以外のはず
もし咲いたところで
人知らず蜂も蝶も知らず
知っているのは私と犬しかいないが
犬はまるで感心なさそう
何のために 誰に出会うためなの?
屈んでカメラを向けたとき
小さな声が聞こえた
似たようなもんじゃない
山上 村人