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4月7日、国土交通大臣の諮問機関である交通政策審議会の小委員会から将来の東京圏の鉄道網について答申案が発表された。2030年のあり方を念頭に、新線新設や既存路線の延伸など計24事業が「意義のあるプロジェクト」として選ばれた。
新聞紙上では、東京オリンピックに向け羽田空港へのアクセス向上となる新路線プロジェクトに注目が集まっているが、埼玉県内では埼玉高速鉄道の延伸と東西交通大宮ルートの新設(大宮―さいたま新都心―浦和美園)、大江戸線延伸(光が丘-大泉学園町-東所沢)の3プロジェクトが答申案に記載された。
答申が出されたのは00年以来16年ぶりだ。この答申は国土交通大臣に行われるもので、法律ではなくあくまでも努力目標のようなもであるが、この答申に盛り込まれることにより、国の後押しが期待でき建設費の補助なども受けやすくなるという効果がある。
しかし、鉄道整備が実現される実際のところ高いハードルがある。2012年度内の事業着手を予定していた埼玉高速鉄道の岩槻延伸は2017年度の着手に延期された。また、東西交通大宮ルートについては当初LRT(ライトレールトランジット)で予定していたが、BRT(バスラピッドトランジット:バスが専用の通行帯を走るもの)方式で整備をすすめるようだ。
鉄道整備は、建設に際してはもちろん非常に大きな投資が必要だが、建設して終わりではなく、その後運営していく中できちんと収益を確保しなければ継続が困難になる。つまり整備にあたっては、事業性を高めるためにその地域の輸送需要を創り上げることが必要なわけだ。だからこそ、ここは大胆な都市構想を期待したい。
過去をさかのぼれば、阪急電鉄の創業者小林一三は輸送需要をつくるため、宅地開発から大学誘致、宝塚歌劇団の創設などに取り組み、日本独特の「私鉄モデル」という経営スタイルを作り上げた。たしかに当時に比べれば、少子高齢化などの社会環境の変化はあるものの、本質は変わらないのではないだろうか。
特にさいたま市においては、埼玉高速鉄道の岩槻延伸と東西交通大宮ルートは一体となって新たな都市の動脈をつくる意義を持っている。だからこそ、単なる宅地化にとどまらず、文化観光拠点やビジネスにおける会議展示会などの拠点作りなど、積極的な都市構想とセットで事業性を生み出すことが求められる。