文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
幼い彼の授業参観に行った。
科目は図工。 上手にできた作品を保護者の方々の前で披露し
説明するという時間だった。
選ばれた彼は得意気なのだと誰もが思っていた。
先生が皆に見えるように作品を高く持ち上げ紹介が始まった。
洋服ハンガーを怪獣に見立てた男の子らしい夢のある作品だった。
題名は忘れもしない、【僕と怪獣】だった。
あまりに夢のある子供らしいものだったので、和やかな笑いと歓声が上がった。
ところが急に彼の雲行きが怪しくなった。
「何すんだ~。俺をつぶしやがって~」と、大きな声を張り上げ泣き喚き
先生から作品を奪いとり、彼は教室から出て行ってしまった。
教室から笑顔が消えた。
「きっと恥ずかしかったのですね。」と先生がフォローしてくれた。
「皆の笑いが、作品を笑われた・・・と思ってしまったのね。」と言う保護者もいた。
落ち着きを取り戻した彼は、作品を大事そうに持って帰ってきた。
「俺をつぶして・・・」と 小さな肩を落とし、寂しそうに一言だけ。
良く見ると、怪獣の背びれの1つに、鉛筆書きで小さく、人の絵が書いてあった。
披露するときに、先生が持っていた所だった。
大きな目が特徴的な彼。
鉛筆書きの小さな人の絵も、キラキラ光る目が描かれており、まさしく彼だった。
こんなにかっこいい怪獣に乗っている [僕]・・・
彼にとっては、[僕]が大事だった・・・
洋服ハンガーの怪獣は簡単に見る事が出来ますが、
小さな[僕]は、気づいた人にしか見えません。
子どもの世界が存在する。
色々なところにある、小さな[僕]が見える人になりたい。