「お店を大きくしようとか、どんどん出店しようという気持ちはないんです。自分の目の届く範囲内で、何の制約も受けずに自由に美味しいうどんを追求したいと思っています」
　
　昨年9月、狭山日高ICからほど近く国道299号沿いに「手打ちうどん如水」をオープンした岩坂隆玄（いわさか　たかはる）店長（36）は言う。
　
　もともと営業マンだったが、外回り中の食べ歩きが昂じてラーメン業界に転職。お店で働く傍ら関東一円、さらには西日本にまで食べ歩きにでかけ味の研究を重ね、独立目指して研さんを積んだ。
　
　「あるとき2日間休みがとれたので食べ歩きに出かけようと思ったんですが、ラーメン一辺倒でなく、うどんを試してみよう」と、「どうせなら本場へ」ということで讃岐うどんを求めて香川へ赴き、2日間で15食を食べ歩いた。
　
　「讃岐うどんの味は、衝撃的でした。うどんはみな同じだと思っていましたが、ラーメンよりも美味い！」
　
　即座にラーメンからうどんへの転換を決意、讃岐うどんのお店で修行を考えた。香川に移り住み、半年間は夜勤の仕事に携わりながらさまざまなうどん店を食べ歩き、修行すべき店探し。手打ちうどん、接客スタイルという条件に合うお店での修行は約2年に及んだ。繁盛店で、岩坂氏はここで1日200人前ほどのうどんを手打ちしした。「香川には全国からうどん修行にやってきます。負けられないという気持ちで打ち込みました」

　そんな岩坂氏の真骨頂は、飽くなき味への探求心とこだわりだ。讃岐で修行しただけに麺は、まさに讃岐うどん。滑らかな喉越し、適度にしなやかなシコシコ感。香川といえどもオーストラリアなど外国産の小麦を用いるお店が主流だが、北海道など国産をメインに組み合わせて用いる。開店当初は、朝手打ちしたものをその日の内に使っていたが、今では一晩おいて翌日に用いることにしている。味が良く馴染むのだ。
　
　ところが、スープは「白だし」の讃岐うどんスタイルとは全く異なる。出汁は煮干しのみを用い、醤油、ごま味噌、梅塩という3種類のタレを合わせている。
　
　また、食材の味を引き出すのに欠かせないのは軟水との考えから、うどんの生地づくりや出汁には軟水を用いている。
　
　開店時からの看板メニューの一つ、肉汁釜揚げうどんのつけ汁は煮干しの香りが引き立つ醤油ベースの濃厚なスープ。意外にさっぱりと、麺によく絡み合う。食べ終わる頃に出される生姜湯を余ったスープに入れて飲むのだが、これがまたクセになる。
　

　今年になってから新たにメニューに加わったのが、カレーうどんだ。一般的なカレーうどんは和風出汁だが、欧風カレーをベースにしている。「和風出汁のカレーうどんというイメージを覆そうと思いました。16種類の野菜・果実をミキサーで砕き旨味をスープに閉じ込めています」と岩坂氏が語るように、カレーにえもいわれぬ甘みがある。深くてマイルドなカレーと、コシのある麺のマッチングも上々だ。小ライスがついているから、うどんが終わった後、丼に投入してカレー雑炊風に食すのがもう一つの楽しみだ。この絶品カレーうどんには、女性や子連れ客のリピーターが増大中とか。
　
　近所の住民やビジネスマンに徐々に注目され、週に何度も通う熱心なファンも増えてきているというのも納得。
　
　讃岐で修行したとはいえ、店名に「讃岐うどん」は掲げていない。「縛られずに自由な発想でメニューを開発していきたい」と、岩坂氏は言う。注目すべきうどん店の誕生だ。「手打ちうどん如水」の今後が、ますます期待される。
　
【手打ちうどん如水】
〒350-1327狭山市笹井1-6-12第3古谷ビル103
TEL/FAX04-2955-7138
営業時間　昼11:30から15:00　夜17:00〜20:00
ざるうどん（550円）、釜揚げうどん（550円）、肉汁釜揚げうどん（650円）、ごま味噌釜揚げうどん（680円）、うめしお釜揚げうどん（700円）、温玉ぶっかけうどん（650円）、カレーうどん（900円）、煮干めし（200円）他
麺の量は、300ｇ（並）、450ｇ（中）、750ｇ（大）、１ｋｇ盛から選べる。