トップページ ≫ 社会 ≫ 特別企画 ~水のスペシャリスト下村政裕からのメッセージ~㉔
社会
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子供たちと水筒(Kids and Water bottle)
~水道とは何? 今一度考えて欲しい~
ここで、2年近くに渡って私の水道に対する思いを発信してきたそのモチベーションの原点についてお話をします。
さいたまでも残念なことながら、一部の子供たちが毎日水筒を持って学校へ通う時代となってしまいました。もともと、日本全国の子供たちにとって学校へ水筒を持っていくのは運動会や遠足の時。おうちの人に作っていただくお弁当と共にとても楽しい思い出の一つの道具でしたよね。
いつから子供たちが学校へ毎日水筒を持って行くようになったのでしょうか?
それはかれこれ30年以上も前、関西地区の子供たちがそのルーツになると認識しています。大阪の水道水源である淀川。琵琶湖から流れ出るこの川は、琵琶湖の富栄養化による赤潮の発生、京都からの生活排水の流入などにより、琵琶湖とともに水質汚染問題が社会問題化していました。通常の水処理では取れない匂いが浄水場を通過し、各家庭の蛇口まで届いていたのです。大阪の水道水は臭い。蛇口の水は飲めない。関西圏の方の多くの方がそう思い、水道離れの引き金となりました。そして子供たちは、水筒を持って毎日学校へ行くことになりました。もちろん、私自身もそのことは当時としてはやむを得ない、親ごさんや学校の先生がとった最善の措置だと思っています。しかしながら、水筒を持って学校へ通い始めた子供たちの今はどうなっているのでしょうか? 今、その子たちは立派な大人になっています。そして、水道界に入って精力的に働いている方もいらっしゃいます。そんな彼らと話す機会も少なからずあります。水道を学び、水道界で働く、水筒を持って学校へ通った経験を持つ彼らの多くは、現在水道水は飲めると理解をしてくれています。高度浄水処理等のハイテク処理で、そうした異臭物質は完全に処理することができ、現在の日本の水道は全国津々浦々、国の定めた水質基準に適合した安全かつおいしい水を配ることができているからです。ところが彼らは言います。頭ではわかっているけど、実際にコップに蛇口から水を汲んで口元まで持っていくけどどうしても飲めないと…。 教育の怖さです。頭ではわかっても、子供時代に蛇口の水は飲めないと自らの経験から習った彼らは、体が受け付けなくなっているということです。
このことが皆様方に「水道事業とは?」という発信を続けるモチベーションの大きな一つになっています。皆様方もぜひ日本の将来のために子供や孫たちに、水筒を持って学校へ行かせることの意味、未来への影響を、水と生活のあるべき姿という観点から考えていただきたいと心からそう思っています。