社会
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麻生首相は九日午後4時半から、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、「新たな成長に向けて」と題する長期戦略を発表した。2020年までに、国内総生産(GDP)を120兆円増やし雇用を400万人創出するのが目標。日本の将来像を①低炭素革命で世界をリードする国②安心・元気な健康長寿社会③日本の魅力発揮、とし10大プロジェクトで目標を達成したいとしている。「高度成長期はテレビ・冷蔵庫・洗濯機が三種の神器だったが、これからは太陽光発電機、電気自動車、省エネ家電が三種の神器になる」と語った。
昨年9月に首相に就任してから支持率がおちっぱなしの首相だが、小沢民主党代表の秘書逮捕をきっかけに、支持率が上向きになってきた。ここで大風呂敷を広げて、人気を挽回して衆議院解散に持ち込みたい、との戦略と見える。「未来開拓戦略」という副題で、計画事態は現在考えられる新しい技術を実用化しようとする意欲的なもので、国民に支持されるプロジェクトを数多く含んでいる。民主党のマニフェストが具体的に見えないだけに、この戦略を自民党のマニフェストにし、広く国民に浸透させれば、自民との起死回生になる可能性を秘めている。衆議院の解散時期についての質問には「9月10日までにはやる」と答えたが、新しい補正予算が成立したあとになると見られ、その間、内閣支持率がじわじわと上がってきて、麻生長期戦略が選挙民に浸透してゆけば、自民党の大敗を防ぐことができるかもしれない。首相本人も記者会見は陽気で麻生節が久しぶりに飛び出し、日本のタレントが表紙になっている中国や台湾の若者向け雑誌を見せながら説明した。この戦略をテコに自民党の凋落を建て直す意欲を内に秘めた会見だった。
10大プロジェクトは次の通り。
①太陽光世界一プラン
太陽光発電を2020年ころに現在の20倍程度に。電力会社に現在の2倍程度で買い取らせて需要を創出、太陽光システム価格を3~5年後に半減させる。公立の小中高校3万6千カ所に太陽光発電を集中設置。省エネ住宅を3年間で300万戸つくり2019年には50%を超える住宅を省エネにする、など。
②エコカー世界最速普及プラン
電気自動車、ハイブリットカーなどエコカーを2020年には新車販売の5割にする。国4千台、地方20万台の公用車をエコカーに。エコカー100万台に買い換え促進。電気自動車の最先端モデル都市10カ所をつくる。省エネ家電にエコポイントをつけ1年間に3000万台の家電を省エネ家電に、など。
③低炭素交通革命
次世代交通機関の最速開発・最速普及。フリーゲージレインを2010年夏を目途に実用化。2012年目途に電池式省エネ路面電車実用化。2016年度までに超伝導リニア実用化。三大都市圏環状道路のミッシングリンク早期解消。港湾コスト3割削減、など。
④資源大国実現プラン
家庭に眠る携帯電話の回収制度をつくり3年間で1億台を回収し金3トンを回収、世界最大の都市鉱山を活用。廃プラスチック総資源化2020年まで90%以上。世界の水市場に参入、100兆円の市場に。海底熱鉱床開発、メタンハイドレート開発を今後10年目途に商業化、など。
⑤30万人介護雇用プラン
介護職員待遇改善の緊急措置、待遇改善に取り組む事業者支援などで3年間に30万人の雇用創出。資格取得・キャリア形成支援、離職者への無料職業訓練。新たな介護報酬体系構築。介護拠点前倒し集中整備。駅のバリアフリー整備、など。2020年までに50~90万人の雇用創出。
⑥地域医療再生プラン
人口30万人規模の地域を全国348カ所で医療再生計画。広域での連携に医師事務補助者2万人配置、高度医療施設、IT設備、通院バスなど支援。新生児集中治療室を3000床に、救急医療センターを237カ所に、など。
⑦医療技術イノベーション
医薬品・医療機器・再生医療の開発や実用化を国家プロジェクトで。世界トップレベルの新型インフルエンザ対策、全国民分のワクチン開発・生産期間の大幅短縮、現状の1年半から2年を半年で(5年以内)など。
⑧農林業潜在力活用プラン
耕作放棄農地解消、放棄地の4分の1にあたる10万ヘクタールを再生。農地集約、多様な担い手への利用拡大。24毛作の植物工場全国展開、3年以内に150カ所、野菜生産コスト3割削減。スギ花粉対策、花粉の少ないスギ300万本植え替え。3年間で。
⑨ソフトパワー発信プラン
コンテンツ産業の輸出促進、現状の1.9%を米国名並の17.8%に。輸出額現状の2500億円を2020年に2兆5000億円に。市場規模を現状の14兆円から20~30兆円規模にし雇用規模を2020年には240万人以上に。
キラリと光る観光大国に。2020年に外国人旅行者2000万人に。観光地・地域の景観形成・歴史まちづくり500地域。無電柱化加速。観光圏約30カ所で3年間に集中実施。入国審査待ち時間の半減。首都圏空港の容量・機能拡大。羽田~成田空港間のアクセスを50分に。休暇の地区別分散で観光地の混雑緩和と需要分散。
⑩日本の「底力」の強化
世界最高水準の人材力強化・技術力発揮。3年以内に全市町村の小中学校に初中等理数教育における外部人材を配置。パソコン教員に1人に1台、児童3.6人に1台、校内LAN整備100%、全教室にデジタルテレビ配置。ポスドク・研究支援者の大規模活用。世界トップレベル研究開発拠点を5カ所。大学施設の老朽化対策と高度化を3年間で集中実施。超小型衛星の開発・活用で新市場創造、世界のトップレベル技術の中小ベンチャー100社創出。
IT底力発揮。電子政府加速化、国民私書箱整備。地上デジタル放送完全移行、ブロードバンドゼロ地域解消。アナログテレビ放送電波跡地の活用、革新的ネットワーク技術開発で新産業創出。
(2009年4月9日 日本記者クラブ会員・志村嘉一郎)