うわさの噂
まちで耳にした噂話、内緒話をこっそりお届け
いつの世も男と女しかいない。そしていつの世も女の方が強(したたか)で狡猾なのだ。よくいえば力強い現実家なのだ。しかも女狐ともなればこれは男を巧妙に馳す妖しい生き物の代表だろう。しかし、女狐は見た目では狐の姿とはわからないように化けている。魔女も最初は女神の格柄で振るまうのが常だ。
山之内京介さん(仮名)は見事に女狐にやられた。山之内さんは著述業。そして出版社のオーナーでもある。埼玉県ではそれなりに名の知れた老ジャーナリストの経営者だった。一人の女が入社してきた。頭の良いおとなしげないかにも良家の麗人というふんいきをかもしだしていた。山之内さんに魔がさした。その女に魅きこまれた。狂ったのだ。女も素振りは山之内さんに好意を寄せているように見せかけていたから、山之内さんは舞いあがった。この女に執拗に迫まったが、そのたびにスルり。山之内さんは、その女にスナックを持たせた。客は山之内さんの顔の広さで友人達を送りこんだ。あげくのはては会社の経理まですべてまかせてしまった。こうなると完全に男の負けだ。ある晩、山之内さんは今夜こそ、思いを遂げようと三、四日留守にしていたスナックに寄った。山之内さんは目まいがした。女の姿はどこにもなかった。会社の金も店の金もすべて奪って女は他の男と逃走していた。山之内さんが夢にも思わなかったことが起きていたのだ。体調をこわし、無一文になった山之内さんは1ケ月後、ふるさとの九州に帰った。女狐の姿は杳(よう)としてわからなくなった。人生の晩節にきた山之内さんの消息もとだえてしまって人々の言の葉にものらなくなった。
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