社会
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今年に入って日本の株式相場が乱高下している。日経平均株価が2月末に史上最高値を更新し、3月に4万円台に乗せ、7月11日には終値で42224円になった。ところが、31日に日本銀行の植田総裁が利上げを発表したのを引き金に翌日から株価は急落、8月5日には1987年のブラックマンデーを超える4451円幅の暴落となった。その後も連日、急騰、急落を繰り返してきた(9月27日の終値は39829円)。
「貯蓄から投資へ」がブームになる中での株価騰落は新規参入の投資家たちにショックを与え、今後の動向に関心が集まっている。9月17日発売『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版)では、強気と弱気の代表的論者が執筆していて興味深い。
強気のほうは武者リサーチ代表の武者陵司氏(75歳)。大和証券を経てドイツ証券のストラテジストになり、副会長まで務めた。論客として知られ、経済指標を駆使しての立て板に水のような解説には定評がある。武者氏は「日銀のサプライズ利上げで日経平均は20%暴落したが、8月6日から16日までに下落幅の86%が取り戻された。株価急落が日本経済の基礎的条件に基づいたものではなかったことを示している」として、今年4月~6月期の実質GDPは主要7か国で日本がトップの伸びだったことに注目する。
さらにカナダのコンビニ大手がセブン&アイ・ホールディングスの買収提案したことの意義を強調する。優れた内容の企業なのに、それが生かされていないと市場に判断されればM&Aで経営の転換を求められる時代だとした上で「企業経営者の資本効率意識が高まり、稼ぐ力が注目される市場になり始めた」と評価している。
弱気のほうは「今は歴史的に例を見ないバブルの最終局面に近づいている」と説く澤上篤人氏(77歳 さわかみ投信の設立者)だ。当欄でも6月8日付の「リスクある株式相場」で澤上氏の見解を紹介した。まず、世界の金融市場が大成長した3つの理由をあげている。①1973年からの石油危機を発端に世界中の富が産油国に吸い上げられ、非産油国は経済立て直しのため、財政・金融政策で資金を大量投入し続けた。②1980年代に登場し、膨れ上がる一途の年金マネーが株式市場に流れ込んだ。③金利をゼロにして資金を大量に供給しさえすれば経済は成長するという「マネタリズム」理論の採用。
しかし、今や限界に来ており、どこの国も債務が巨額に積み上がる一方でインフレが起き、金利も上昇という状況となったと見る。
武者氏と澤上氏の意見はともに示唆に富むが、今の投資家心理としては弱気に傾きやすいかもしれない。そこで武者氏は「政府は株安を引き起こす経済政策は容認されない状況にある」として、年末の日経平均45000円を予想している。「はて?」と言いたいところだ。
山田洋