文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
人生で一度だけファンレターをもらったことがある。
人生で嬉しかったことは他にもいくつかあれど、あの時は本当にこころの底から感激した。
学校を卒業して初めて入った会社は、キャラクター文具のメーカーだった。わたしはアイテム企画の部署に所属していた。小学生向けアイテムの一つに、ノートなのにマンガが書いてあったり、YES・NO心理テストがあったりする面白ノートがあった。わたしは、ノートの面白要素を考える担当者で、デザイナーさんに面白内容を使った絵柄を作成してもらっていた。デザイナーさんとの打合せも面白要素に関してなので、盛り上がる楽しいものだった。そして、調子にのったわたしは、ノートに登場するキャラクターを主人公とした歌を作曲し、五線譜と共に掲載した。ノートとはいえないようなノートになった。
そうしたら、届いたのだ。会社にファンレターが。小学生の女の子がその曲を気に入ってくれて、クラスで毎朝歌ってくれているというではないか。一緒に担当したデザイナーさんと、ファンレターを何度も読み返したものだ。
これまた調子にのったわたしは、みんなで歌っている様子を是非聞きたいと、カセットテープを女の子に送り、是非吹きこんで欲しいと書き添えた。(カセットテープというのが時代を感じさせる。)
そして、テープは送られては来なかった。
今思えば、女の子に悪い事をしてしまったかもしれない。毎朝、みんなでノートにある曲を歌うだろうか?わたしたちを喜ばそうと勢いで書いてくれたのではなかっただろうか。
秋の夜長は、過去のことをいろいろ思い出させる。
かつてのわたしと今のわたしは、変わったところと変わらないところがある。
変わらないのは、あの頃も今も、自分が作ったもの、今は文章で誰かを楽しませたいという気持ちだ。
あなたの変わらないところは何ですか?
檀ままこ
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