トップページ ≫ 社会 ≫ 教育 ≫ 【高校入試】初登場した「学校選択問題」の衝撃と今後に向けた対策について(4)
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●次年度以降の受検生にとっての注意点と対策
2017年春に「学校選択問題」で入試を行った高校の中には,おそらく数学の点数が低すぎて差がつかなかったところが複数存在していることでしょう。この結果で不都合を被ったところは次年度以降「学校選択問題」の採用を控えることになるでしょうが,私はむしろ「数学の点数が低くなった方が好都合だった」高校の方が多かったのではないかと予測しています。
その理由は「2016年版 埼玉県の高校入試で親子が知っておくべき5つのポイント(2)」で申し上げている通り,今春の高校受検生たちは従来の大学入試システムを採用する最終学年であり「浪人するわけにはいかない」大前提があったという一点です。現役合格のための第一条件である「英語が得意であること」で合否判断をするには,今回の難易度はむしろ好都合だったとさえ言えるでしょう。
浦和高校や大宮高校といった難関国公立大学を中心に進路を考える生徒が多数を占める高校であれば,テストの形式がどのように変わろうともそれをはるかに越えたところで準備をするはずですから浪人しようとも学校がそれほど面倒をみる必要はないでしょう。それに対して大学合格実績の中心がMARCHとなる学校,あるいは今後合格実績を伸長させようと考えている学校だと,生徒が浪人しても新テストに対応するだけの余力が充分とは言い切れないのが正直なところです。これらの学校では新テストの動向がハッキリするまでは,生徒の実情に合っておらず差がつかない数学であっても「学校選択問題」を採用するほうが大きなメリットを得られることが予想されるのです。
よって,一部の高校では「学校選択問題の数学」を必要以上に怖れる必要はありません。「それはどこ?」と聞かれると困りますが,大学合格実績を掲載しておきますのでその結果から類推してください。東京理科大の実績も付記しておきますので,理系選択者数をそこから推測してください。これが結果として高校入試の段階で「数学を得意とする生徒の多さ」に比例している可能性があることを頭に入れて実績を見てください。
学校選択問題」を採用した20校の2016年春私立大学合格実績一覧 ( )内は浪人
学校名 |
早稲田 |
慶應 |
上智 |
明治 |
青山学院 |
立教 |
中央 |
法政 |
東京理科 |
浦和 |
152(115) |
71(54) |
18(10) |
155(136) |
14(13) |
30(24) |
94(86) |
51(48) |
150(131) |
大宮 |
144(38) |
49(16) |
33(3) |
169(33) |
33(5) |
101(12) |
81(27) |
84(19) |
133(52) |
浦和一女 |
91(20) |
21(5) |
33(5) |
101(23) |
27(5) |
112(20) |
34(17) |
64(17) |
55(20) |
市立浦和 |
45(7) |
18(3) |
24(1) |
77(15) |
25(1) |
95(6) |
44(10) |
94(19) |
35(7) |
蕨 |
36(13) |
5(1) |
12(0) |
92(15) |
25(1) |
62(4) |
40(5) |
78(6) |
35(6) |
浦和西 |
9(4) |
3(0) |
5(1) |
43(10) |
21(4) |
45(7) |
22(1) |
63(6) |
17(8) |
川口北 |
7(1) |
1(1) |
2(1) |
22(8) |
14(2) |
22(4) |
12(5) |
43(12) |
8(2) |
春日部 |
49(28) |
16(11) |
10(3) |
92(45) |
9(7) |
35(17) |
44(30) |
71(39) |
81(47) |
越谷北 |
34(4) |
4(0) |
9(1) |
63(9) |
15(1) |
50(2) |
26(4) |
64(6) |
37(5) |
越ヶ谷 |
13(0) |
3(0) |
8(3) |
35(1) |
9(0) |
22(5) |
14(2) |
55(4) |
16(2) |
不動岡 |
17(5) |
3(0) |
3(1) |
32(11) |
18(4) |
35(6) |
24(9) |
55(12) |
31(11) |
熊谷 |
31(21) |
7(3) |
10(6) |
43(30) |
18(9) |
27(17) |
35(18) |
73(34) |
26(15) |
熊谷女子 |
8(1) |
0 |
5(0) |
11(3) |
7(2) |
22(1) |
9(0) |
20(0) |
6(5) |
熊谷西 |
3(2) |
0 |
1(1) |
20(11) |
4(1) |
11(4) |
10(6) |
20(6) |
7(5) |
川越 |
121(37) |
38(20) |
31(11) |
144(50) |
20(8) |
74(35) |
58(31) |
54(20) |
92(41) |
川越女子 |
61(8) |
7(2) |
13(3) |
75(13) |
14(1) |
104(16) |
35(12) |
88(23) |
26(11) |
川越南 |
5(3) |
2(1) |
3(0) |
10(7) |
8(0) |
12(1) |
11(4) |
35(5) |
4(2) |
所沢北 |
28(6) |
4(4) |
8(4) |
62(13) |
18(2) |
55(13) |
43(7) |
75(12) |
26(13) |
所沢 |
10(6) |
0 |
0 |
17(7) |
11(2) |
14(5) |
19(5) |
25(5) |
4(3) |
和光国際 |
3 |
0 |
0 |
13 |
14 |
23 |
9 |
43 |
7 |
和光国際は現浪の区別不明
教科ごとの対策としては「とにかく英語を得意にし,得点源とすること」が最優先となります。数学は,将来の進路と連動させて考えましょう。「難関国公立大(文理問わず)を目指す」「理系を目指す」という場合には,6点,7点という高い配点の問題を正解できるような準備が必要で,学校の定期試験や北辰テストを上限としない勉強(難関国私立高校の入試問題に対応する)を続けながら,トータル8割以上の得点を目指しましょう。掲載したような私立大学の文系を目指す場合,あるいはこれらの大学への合格実績がいまひとつの高校への進学を目指す場合には,数学は「計算問題を確実に正解すること」「一般的な学力検査との共通問題を落とさないこと」「大問3,大問4では(1)を確実に正解すること」を目標に,トータル6割程度の得点が計算できるように仕上げましょう。英語が高得点の勝負になることを考えると,残りの国語・理科・社会に苦手があると不利になりますから準備にかける時間と労力のバランスに注意を払ってください。
(おわり)
教育クリエイター 秋田洋和