文芸広場
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よくも悪くも影響を受けやすい。
最近、気になっているひとがいる。元朝日新聞編集委員の稲垣えみ子さんだ。
稲垣さんは、朝日新聞社に勤務していた時に、電気を極力使わない生活を実践したコラムを書いていた。掃除機、洗濯機、冷蔵庫と次々に手放していった。あらゆるプラグを抜いていくなかで、遂には会社というプラグも抜いてしまった。月々の電気代は200円以下。その生活は、とても興味深い。先日、テレビでも生活ぶりが取材されていた。髪型もアフロ!!自由なたたずまいの稲垣さんから、目が離せない。
稲垣さんの真似が出来るひとは、なかなかいないだろう。わたしにも無理。
でも、稲垣さんを見習って、むやみやたらと部屋を明るくすることは辞めてみた。太陽光を大切にしてみる。朝はなるべく早く起き、夜は太陽が沈むぎりぎりまで電気を点けずに、夕闇も味わってみることにした。すると、これが意外にいい。煌々と明かりをつけなくとも、生活は出来るし、薄暗がりはひとをリラックスさせる。
薄暗がりの中、台所仕事をしていると、そこに家族が乱入してきてパチンと電灯のスイッチを押す。眩しい!!いい迷惑である。
「文明人よ。なぜそんなに照らし出すのか。わたしは闇にまみれたい。そっとしておいてくれ給え。」
わたしは江戸時代から現代にタイムスリップしてきた者となって、煌々と電気を点け続ける家族を迷惑そうに見る。
電気をつけずに入浴してみた。これが、意外と明るい。隣の家の明かりが浴室内を照らす。借景ならぬ「借光」。湯を沸かすボタンは赤く光り、浴槽内にゆらりとうつる。いとおかし。わたしはまだ、江戸気分。
当たり前だと思うものを切り捨ててみると、新しい景色が見えて楽しい。一度きりの人生は自らの身体を使った人体実験だ。わたしの実験は続く、続く。
檀 ままこ