トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 合理的なランチョン・ビジネス
外交評論家 加瀬英明 論集
日本人は個人の「個」の意識が薄い集団社会であり、人々が群れようとするので、できるだけ物事を他人と共有しようとする。時間すら共有することを通じて、一体になろうとする。たしかにどのような文化をもった社会であっても、共通の体験が深いほど親しさが増すというものである。しかし日本人どうしでつきあいにかける時間と金は、西洋人の場合と比べれば数倍になるはずである。
もちろん、こういった統計をとることはできないだろうが、五、六倍にはなるのではないか。
一つの手掛かりは、日米の邦人交際費の比較である。以前に調べたことがあるが、一九七六年にアメリカのIRS(国税庁)の数字でアメリカの法人の交際費が四十五億五千万ドルであったのに対して、なんと同じ年に日本の法人は一兆六千七百二十億円(八十三億ドル)をも使っていた。
アメリカは人口が日本のちょうど倍だから、日本のほうはアメリカの四倍も交際費をかけていることになる。
日本では贈答品が多いのも、共有したいという衝動が強いからであろう。西洋人は滅多に物をくれるものではない。日本人は気前がよいのだ。
アメリカ人や、ヨーロッパ人は男どうしで夜、食事を供にして、ネオン街に繰り出すようなことは、まずしないものである。男どうしの接待は、ほとんどの場合、昼食である。夜は夫人同伴で外へ行くか、家庭で客をもてなすものである。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 7章「家庭」のなかの個人
バックナンバー
新着ニュース
特別企画PR