トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 不潔な朝鮮・中国と清潔な日本、手づかみの西洋
外交評論家 加瀬英明 論集
日本は何処へ行っても清潔だった。数年前に、麻布にあるアメリカ公使の公邸に招かれた。そこで知り合ったアメリカ人が、「香港のディズニーランドでは、中国人客がいたるところで痰を吐き、あたり構わずに鶏の骨や、屑を捨て、植え込みで立小便をしていました。ところが、日本のディズニーランドには、塵一つ落ちていなく、アメリカのディズニーランドよりも清潔でした。)と、いった。観光業だということだった。
ハインリッヒ・シュリーマンと言えば、トロイア遺跡の発掘で有名である。中国を訪れた帰りに、暦が明治に改まる三年前の慶応元(一八六五)年に日本に寄った。
シュリーマンは「日本人が、世界でいちばん清潔な国民であることは、異論の余地はない(略)日本の住宅は、おしなべて清潔さのお手本になるだろう」(『シュリーマン旅行記』)と、書いている。
イザベラ・バードは十九世紀後期のイギリスの女性旅行作家として、有名である。明治十一(一八七八)年に、日本を旅した。
バードは日本国内を「平民のふるまいを見てみたかったから」、三等車で旅した。車輛は「貧しい日本人で一杯」だった。乗客の「他人や私たちに対する人々の礼儀正しい態度、すべての振舞いに、感心した。それは美しいものだった。礼儀正しくて親切。イギリスで目にする振舞いと較べて、何という違いだろう」(『日本奥地紀行』)と、述べている。
「老人や、盲人に対する日本人の気配りも、この旅で見聞した。私たちの最も良いマナーも、日本人のマナーの気品と親切さに及ばない」
バードはその後、朝鮮と中国を訪れた。
「信じられないような汚さ、英語で表せないようなひどい悪臭、うす汚さ、(略)騒がしさ、物売り、耳さわりな騒音は、中国の都市に共通する特徴であるが、頭がおかしくなる程の騒音で、鼓膜が破れそうだ。
中国の町の連中は、無作法で野蛮で、下品、卑劣で無知さ加減は筆舌に尽くせない。想像をすることもできないような不潔さのなかで、暮らしている。(略)私は北京を見るまで、朝鮮のソウルが地球上で最も不潔な都市と思っていた」
初代駐日公使のオールコックは、「街には不快なものは荷物もおくことを許されない(略)清潔ということにかけては、日本人は他の東洋民族より大いにまさっており、とくに中国人にまさっている。中国の街路は見る目と、嗅ぐ鼻をもっている人なら、悪寒を感じないわけにはゆかない」(『大君の都』)と、観察している。
アメリカの初代領事だったタウゼント・ハリス(一八〇四~七八年)も、「人々はいずれも、さっぱりとしたよい身なりをして、栄養もよさそうだった。実際、私は日本に来てから、汚い貧乏人を一度も見ていない」と、書いている。
日本人が美と、清潔さを重んじたのは、美しい心や、清い心をもつことに通じていた。
モースは大森貝塚の発見者であるが、つぎのように述べている。
「東京の死亡率が、ボストンのそれよりも少ないと知って驚いた私は、この国の保険状態に就いて、研究をした。(略)我国で悪い排水や不完全な便所その他に起因する病気は、日本には無いが、あっても非常に稀である。これは、すべての排出物が都市から運び出され、肥料として利用されることによるのかもしれない。我国ではこの下水が自由に入江や湾に流れ入り、水を不潔に水生物を殺す。そして、その臭気が公衆の鼻を襲い、人々を酷い目にあわす」
日本では、糞尿は商品だった。汲み取り屋が組合をつくって集め、田舎に運んで肥料として売った。
ヨーロッパでは糞尿は十八世紀に入るまで、街路に塵埃とともに窓から捨てていた。パリも悪臭に包まれていた。西洋人は体を洗わなかった。フランスの太陽王といわれた。バスツールが一八六五年に病原菌を発見したために、はじめて入浴習慣がひろまり、下水道が整備されるようになった。
中国でも、朝鮮でも、糞尿が路上に捨てられた。
安土桃山時代にヨーロッパの宣教師が日本から本国へ送った報告書を読むと、日本に何種類ものチリ紙があることに、驚いている。当時のヨーロッパは、チリ紙を作ることができなかった。日本から輸入するチリ紙が、珍重された。いまでも高級シティホテルのバスルームに、風呂と便器が並んでいるのは、用便後に水で洗った後進性を示している。
また、「日本では小さな子どもまでが、二本の棒を使って食事をとる」と述べているが、そのころ西洋では宮廷においても、手づかみで食べていた。
フォークがはじめて登場したのは、十六世紀のイタリアであり、ヨーロッパではナイフで切って手で食べていた。西洋料理にナプキンがつきものなのは、その名の通りである。
徳の国富論 資源小国 日本の力 6章 「指導者」や「独裁者」がなかった日本語
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