うわさの噂
まちで耳にした噂話、内緒話をこっそりお届け
別に寿司屋と特定しなくてもよいが、とにかく嫌味な客はどこにもいるものだ。
別所一男氏(仮名)62才は、自称ものしり博士。そして粋な男。「俺みたいな男を歩くダンディズムというんだぜ」は口ぐせだ。この別所氏には10才年下の女性パートナーがいる。2人はいつも一緒だ。鼻が高くて、目はパッチリ。くちびるは厚く、いかにも男好きする女性だ。
「寿司屋のカウンターにきたら、まずヒカリもの、次は厚切りのタマゴ。そして赤身のマグロ、中トロといくのが通なんだよ」と女性に語りかけるが、それがまわりの客にわざと聞こえるようにつぶやく。そして最後はあがりで、おあいそとそれみよがしに言い放つ。
あがりは寿司屋というよりはもともとは客のつかない遊女達が、お茶を挽くという言葉を嫌って使った言葉。寿司屋の客が使う言葉ではない。ましておあいそなんて、店側の言葉で、あいそがなくてすいませんという意味で、まるでこの別所氏トンチンカンの物知りで、店側はいつも苦笑いしている。
恥はかきたくないもんだ。
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