社会
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一時はトーンダウンしていた2020年夏季五輪の東京招致報道が再びかまびすしくなってきた。猪瀬直樹・東京都知事の「イスラム諸国が共有するのはアラー(神)だけで、互いにけんかばかりしている」発言が問題になり、発言を謝罪、撤回するにいたり、招致は遠のいたかに見えた時もあった。ところが、5月末に最大のライバル候補と目されているイスタンブール(トルコ)で反政府デモが発生し、拡大した。これが東京招致に有利に働くと判断されているようだ。
しかし、なぜ東京でまたオリンピックなのかという根本のところがどうにもわかりにくい。日本の国家財政は破綻の危機に瀕しており、立て直しのために消費税増税が予定されているというのに、スイスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)委員へのプレゼンテーションには、副総理も同行し、国による財政保証を約束しているのだ。
東京への一極集中は加速し、地方はどこもが青息吐息、原発被害に遭った福島では多くの人々が自宅にも戻れない状態だ。五輪招致でも「復興」という言葉を盛り込んでいるが、欺瞞としか言いようがない。
招致に熱心な人々は、2016年五輪招致の頃から一貫して経済効果ということを謳っている。経済効果が目的なら、もっとましな金の使い道はいくらでもあるはずだ。
こんなうさん臭い五輪招致でも4年前より地元の支持率が上がっているという。これはマスコミによる影響も大きいのではないか。テレビや大手広告代理店にとって、五輪開催は願ってもないビジネスチャンスだ。だからテレビの報道番組でも五輪招致に批判的な意見はないに等しく、それを言い出しにくい環境になりつつある。
失言直後はしょげ返っていた猪瀬知事も今や得意満面。いつもの仏頂面ではなく、変な笑みを浮かべているが、これが薄気味悪い。名前からの連想かもしれないが、イボ猪を見た時の悪感と似ているのだ。
(山田 洋)