社会
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大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の通訳だった水原一平被告は、違法賭博による莫大な損金を大谷選手の銀行口座から不正に送金したと、連邦地裁で有罪を認めた。この事件は日本でもスポーツ賭博をめぐる議論に影響を及ぼした。
米国では1992年にスポーツ賭博を違法とする連邦法が制定されたが、2018年に連邦最高裁がこの法律を違憲とする判決を下し、スポーツ賭博を認めるかどうかは州の判断に委ねるとした。現在は38州で合法化されている。
この背景には各州の税収増、そして新ビジネスによるスポーツ界の収益狙いがあった。州によっては大学スポーツ競技まで対象になっている。水原被告が罪に問われたカリフォルニア州は今でもスポーツ賭博は禁止だ。
日本では自民党にスポーツ立国調査会があり、スポーツ賭博のプラス面に着目している。その中心メンバーの国会議員は「スポーツ賭博は競馬や競輪など公営4競技に匹敵するほど広がる可能性がある。すでに国内のスポーツは海外の賭けの対象になっており、その金額は5兆円とも言われている。このままでいいのか」として、その資金でのスポーツ界活性化にも言及する。
しかし、水原被告のようなギャンブル依存症の例を見て、世論は慎重論に傾く。もともとスポーツ賭博による税収増とスポーツ団体のビジネスチャンスを評価していた桜美林大学の小林至氏(日本のプロ野球の選手や球団役員の経験者)は先日の毎日新聞のインタビューに「導入には法制化が必要なので、国会議員による本格的な議連ができないと話が進まない。今の状況で有力な政治家が動く可能性は考えにくい」と答えている。
賭博で確実に利益を得るのは胴元だけだ。その胴元の「上がり」を当てにして税収増とかスポーツ振興というのは、日本のスポーツファンがすんなり受け入れるとは思えない。
山田洋