社会
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3月19日に亡くなった米国・デューク大学の福島孝徳教授(享年81歳)は脳神経外科で世界に知られた名医で、日本の病院にもやって来て多くの手術を手掛け、患者の命を救った。
彼の名を知ったのは、都立戸山高校の同期生で遊び仲間が、私の大学サークルでの先輩だったからだ。一緒に麻雀をした時の話を聞いた。伏せた牌に下から指先が触れただけで、その牌が何か分かってしまうのだという。指の鋭い感覚は手術に生かされているようで、福島教授の手術を見学した人々は一様にその手さばき、速さは神技のようだと驚嘆する。
東京大学医学部を卒業後もドイツと米国で学び、1978年から東大附属病院や三井記念病院に勤務し、頭蓋底の鍵穴手術法を確立した。開頭せず、頭蓋骨に小さな穴をあけ、顕微鏡を使って手術し、患者の負担を最小に抑えるのだ。
しかし、大学の教授選に立候補した際、脳外科にスター教授が誕生することに他の科からの反発があり、怪文書まで流されたという。教授選がきっかけとなり、48歳で米国行きを決意した。
だから、日本の大学医学部の人事や教育内容について厳しく批判している。外科であっても、手術などの臨床実績よりも学術論文の多さが評価される。臨床の経験の少ない人が教授になっても、上手な手術ができるわけがないのだ。
土曜・日曜も休まず、いつも手術に没頭していた福島教授は意外にもセミプロのジャズバンドを結成してドラムを叩いていた。ドラムでの手足の動きが手術に役立つという。このバンドのメンバー2人と親しかったので、7~8年前に演奏会に行った。驚いたのは医学関係者と思われる外国人客が多かったことと、豪華な飲食が用意されていたことだ。入場料金は安かったので、福島教授の特別サービスだったのだろう。もう一度行きたいと思っていたが、叶わぬことになった。
山田洋
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