社会
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年末になって「ふるさと納税」のテレビCMが急増している。ろくな説明もなく、この制度を利用すれば得すると訴えているかのようだ。分かりにくいのは、税金を納めるわけではなく、自分が選んだ自治体に寄付を行うことで、所得税や住民税が差し引かれる(控除)制度で、自治体は寄付を集めるために地域の特産物などを用意しているのだ。寄付の件数は11~12月に集中しがちだ。
この制度は大都市と地方との税収格差を是正するために作られたのだという。寄付先の自治体や寄付金の使い道を自分で指定でき、地域の特産物などを返礼品にすることで、地方の魅力をアピールする場としても注目された。2008年に始まり、2015年の制度変更により使いやすくなったために、利用者が急増した。2022年度には寄付総額が前年度比2割増の9654億円で、3年連続で過去最高となった。
税収の少ない自治体にとっては、ふるさと納税は良い制度のように見える。しかし、返礼品によって人気に差が生じ、寄付金額にも影響する。寄付集めのために、地域の特性と無縁の返礼品を用意する例も見られる。納税額の多い高所得者ほど得する逆進性も指摘される。
今年10月にはふるさと納税のルール見直しが実施され、地場商品の基準や経費が厳格化された。経費としては返礼品の調達費や送料、仲介サイト手数料などで、これまで寄付額の5割以下とされてきたが、基準はあいまいだった。1割を占めるのが仲介サイト手数料で、現在、30~40のサイトがある。大手ECサイト運営会社、鉄道や航空会社、デパート、テレビ局などで、業績を調べるとふるさと納税が収益の柱になっているところもある。
寄付額の半分しか自治体に流れないのが現実で、仲介サイトだけが確実に潤うのを知るや、ふるさと納税の存在意義自体に疑念がわいてくる。
山田洋