まちづくり

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伊利仁市長に聞く坂戸市のまちづくり[ 2010 年 2 月 8 日 月曜日 ]

日本一健康のまちへ まずは健康意識の土壌づくりを担う市民活動から

 都心から約45kmに位置し昭和40年代以降都内のベッドタウンとして人口が急増、2006年には人口が10万を突破している坂戸市。「日本一健康なまち」を目指し、「葉酸プロジェクト」を核としたまちづくりで全国から注目を集めている。就任から10年、“健康なまち”をプロデュースしてきた伊利仁市長にお話しを伺った。

docu0002up1 「戦後、物質的には豊かになったものの、人間性は豊かになったでしょうか?いじめが頻発し、欲望を最優先する社会です。人間が心身とともに“健康”であることが全ての基本と考えたのが始まりでした」と話す伊利市長。

 とはいえ、行政が事業計画を立て、それを実行していくという従来の上位下達のやり方では活動が根づいていかない。「健康というものに対する地盤づくりが大切です。これがなければ、どんな素晴らしいプロジェクトもうまくいきません。私たちは2年がかりで取り組みました」

 まず、健康づくりをテーマにした“まちづくり市民会議”を2003年度に結成した。全員公募によるメンバーが1年間に50回以上もの議論の場や市民実態調査を通じ、目指す健康なまちの姿を落とし込んだ「あなたの出番!おいでおいで健康づくり計画」を作成した。この計画を達成するため、翌年には全員公募のボランティア組織「元気にし隊」を発足させ、市民がマスコットキャラクター制作やイベント実施など健康づくりのさまざまな啓発活動に携わった。

 

女子栄養大が研究する「葉酸」の効能に着目

 「健康」に対する市民の注目度は、明らかに上昇した。そう判断した伊利市長は、2006年度に「健康づくり政策室」を設置し、いよいよ葉酸プロジェクトに乗り出した。

 坂戸市に位置する女子栄養大の葉酸に関する先進的な研究を健康づくりに活かすプロジェクトである。葉酸は、ほうれんそうやブロッコリーなど緑黄色野菜や豆類、海藻、レバーなどに多く含まれている水溶性のビタミンで、胎児が正常に発育することを助けたり、貧血を予防する。動脈硬化の危険因子である「ホモシステイン」というアミノ酸を無害のメチオニンに変換する働きを持つため認知症や脳梗塞の発症を抑制する働きもあると期待される。厚生労働省が奨める推奨量240μgに対し、健康づくり政策室は400ugの摂取を提唱し、葉酸が多く含まれる地元産野菜の摂取を呼びかけ、葉酸を強化した食品開発にもチャレンジした。 

 

地元企業や店舗と「葉酸」をテーマに幅広く連携

 その結果、市内の食品企業「サンメリー」とのコラボレーションによる葉酸ブレッドが完成し、市内のパン屋数店舗も参加した。現在では、ドレッシング、レトルトカレー、うどん、たまごなど“葉酸食品”は広がりを見せている。こうした葉酸強化食品のほかに、葉酸を多く含むメニュー、地元農産物を活用したメニューやヘルシーメニューを提供する店舗を「健康づくり応援店」として認定する制度を始め、現在56店舗に及ぶ。

 「市民の間に“健康と葉酸”という考え方は広く伝わっています。地元産の小麦を用いた葉酸ブレッドもつくり学校給食に出しています。小麦を生産する農家の人に学校で小麦作りを解説してもらったりして、子どもたちへの浸透も図っているところです」 

 

医療費の伸び率は県下最低の増加率

 「日本一健康なまち」へのチャレンジは、いま目に見える効果となって現れている。医療費の伸び率が低下し県下最低の増加率となり、介護保険一人当たり給付費も連続して減少を続けた。全国の自治体と逆行する傾向は、市民の健康志向が着実に向上したことの証左だろう。

 健康をテーマにしたまちづくりは、市民から始まり産学官の連携を巻き込んだ壮大なプロジェクトに発展し、経済的にも現実の健康にも、そして財政的にも効果大という大きな果実をもたらした。

 2009年度からは、健康政策やスポーツ、健康保険、保健・医療など今まで各部署に分散していた健康関連の業務を一括して行う健康増進部を新設してますます体制を充実させている。さらに2010年度は、既存施設をリニューアルしてリハビリやジム機能などを備えた健康増進施設に模様替えする。「日本一健康なまち」は、まさに佳境を迎える。

 

※参考サイト

“貴重な「葉酸」に坂戸市が本格的取り組み 女子栄養大学との連携に全国が注目 前編”

http://www.qualitysaitama.com/?p=1077

“貴重な「葉酸」に坂戸市が本格的取り組み 女子栄養大学との連携に全国が注目 後編”

http://www.qualitysaitama.com/?p=1094

 

坂戸スマートIC事業もスタート 企業の立地に総力を結集

 一方、鶴ヶ島市との市境近くにある関越道の鶴ヶ島ICや圏央道の坂戸ICがあり交通アクセスは良好であったが、さらに2010年度は関越道の坂戸スマートIC(仮称)事業が始まる。圏央道の全線開通とあわせ、坂戸市の利便性は抜群に向上すると期待されている。市では、IC周辺の工業団地開発を進め、新たな雇用などまちに元気をもたらす企業立地に全力を注いでいるところだ。

 また、交通のもう一つの柱である東武東上線。これまで駅の南北を行き来する通路がなく不便だった坂戸駅のリニューアル整備が進められ、来年度には南北自由通路の完成により10万都市にふさわしい「市の顔」となる予定だ。

 

高麗川周辺を文化の拠点に

 伊利市長は風光明媚な清流・高麗川に育まれた坂戸で生まれ育ち、この地を愛する。 

「坂戸には女子栄養大、城西大、明海大、と3つの大学があり、文化的な環境が豊かです。また、縄文の昔から、高麗川の清流沿いには人々が集まる暮らしやすい土地であり、歴史も豊かです。ホタルが生息する清流、高麗川周辺を文化の拠点として整備していきたいと考えています」


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