社会
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今年で8回目を迎えた東京マラソン2014を観戦した。平成26年2月23日、レース中に細かいあられが一時的に降ったが、晴れ間ものぞき、まずまずの天候であった。参加資格は主催者公益財団法人東京陸上競技協会によって定められているが、フルマラソン、10kmマラソンがある。競技における制限時間もフルマラソン7時間以内、10kmマラソン1時間40分とされているため、マイペースでじっくり楽しんで参加というわけにはいかない。しかし参加服装は自由なようで思い思いの格好で楽しんでいて、見ているこちらもまた楽しい。完走率は96パーセントであったという。
物理的なゴールは同じだが、参加者約3万6千人のゴールとは何だろう。何に向かって走るのか、どこに向かって進むのか。見えているものとは違う、それぞれのゴール。その人にとってのゴールとは何なのだろう。苦しみに顔をゆがめる人、立ち止まり足をさする人。ランナーは何故、自分自身に過酷な試練を、自ら課して進むのだろうか。
このマラソンに同僚女性社員が参加した。今回で3回目だという。何よりも驚いているのが、昨年末に自動車事故に遭い車は大破、車内にいたとはいえ全身に衝撃を受けていた。それまでコツコツと地道な練習を重ねていた彼女にとってマラソンへの参加は、己を磨き、挑戦していく気力を養うためのゴールであったのだろう。彼女は会社で重責あるポジションにいる。上司は当初反対したが彼女の熱意に、競技途中にリタイヤする勇気も持ちなさいとエールを送った。見事完走を果たした。
翌日、休暇も取らずに仕事に出勤してきた彼女に会った。一つの目標をやり遂げた根性と、全身の痛みをこらえながらも階段の昇り降りをして仕事に挑む姿に、ドキッとする程のプロ意識を感じた。新しく東京の顔となった御仁が東京マラソンのスターターを務めずに冬季オリンピック視察に出かける行動にゴールするという意識を問いたい。前任者のようにプロになりきれなかったという発言だけはもう聞きたくないものだ。
それぞれの参加者がそれぞれの思いを描き、自分だけのゴールを目指す。苦しみながらも結果にたどり着こう、やり遂げようと心に願い、走る。参加者約3万6千人のドラマと一人ひとりのゴールがマラソンの先にあった。
(白坂 健生)