平成17年12月、翌年1月から独占禁止法の罰則が強化されるのを機に、ゼネコン大手5社(清水建設・鹿島・竹中・大成・大林組)の経営者がマスコミ各社を一同に集め共同記者会見を開いて「談合決別宣言」を行った。
その結果、業界に談合はなくなったはずなのだが、その後も名古屋市発注の地下鉄工事を巡る談合事件、日本道路公団の橋梁(きょうりょう)談合、防衛施設庁発注工事談合、知事がらみの談合など、談合はなくなるどころか、相次いで露見している。官製談合などという新たな造語もでてきた。確かに土木建築工事全般を見渡せば、一時期とは比較にならないほど談合の件数は減ったらしい。公共事業の発注方式が指名競争入札から一般競争入札へと入札方式が変化し、談合がしにくくなった面もある。本社所在地の地域を限定したり、施工実績の有無、経営審査会の点数制限等々の条件をつけて公募する方法を条件付一般競争入札というが、指名競争入札に比べれば入札参加希望者の数は数倍に跳ね上がる。それでも談合が成立してきた経緯があった、いや今もある。
業界の営業マンたちは所属する企業が異なっても、常日ごろから親睦を深め、おたがいの意思疎通を図るためのゴルフは絶好の機会であった。それに伴って懇親パーティにマージャン、さらには地域の「防災対策会議」を形成して昼夜を問わず接触を図り会議が終わればまた飲み会である。あまりの回数の多さに健康を害するものも出る有様で、日常の付き合いは会社の異なる部門の社員よりもはるかに頻繁であった。一般的な冠婚葬祭は言うに及ばず本人家族の入院退院の面倒から、息子娘の入学卒業、留学祝いなんでもありである。勿論大部分が交際費で処理されてきた。このような長年の付き合いを重ねながら互いの親密さをまして、談合の土壌は形成され継続してきた。当然のことながら企業規模、経歴、経験年数、人柄等々がものをいい全体を仕切るリーダーが存在する。一時期とは違って多少存在感が薄れてきたものの、まだまだ彼らの活躍する余地は充分すぎるほどにある。経歴の中には役所の定年時の役職なども含まれ、この経験がものをいう場合が官製談合である。
さて「防災対策会議」なるものは、名称の違いがあってもどの地域にも必ず存在し、災害時の予防や復旧に貢献するための役所やガス・電気などの公共企業、建築関連等々の企業の組織である。毎年時期が来ると行われる市民を含めた防災訓練のさまざまな場面に顔を見せているはずである。例えば夏の風物詩でもある台風が接近すると、役所の関連する部署の職員は日曜祭日時間に関係なく非常召集を受け待機し、万一に備えている。災害が発生した場合、あるいは発生しそうな場合に速やかに対応することは市民の安全を確保するための当然の行為であるが、同時に「防災対策会議」に所属する土木事業者、建設業者、他の関連する企業の社員も非常召集を受け、社内に待機しているのである。市民の大部分はこの事実を知らずにすごしている。市民に見えない場所と時間帯に彼らは公共の福祉を担っているのである。近年不況と財政難による公共事業の極端な減少により、地元に密着した零細企業は倒産の憂き目に会い、中堅どころと言ってもリストラによって重機の操作する人員の不足を生じ、由々しき事態である。影で市民の安全を支えてきた「防災対策会議」の力量が極端に落ちてきている。この集団を形成する民間企業の一部が談合体質を維持してきた事実も認めなければならない。
話題を元に戻そう。地方公共団体の財政難、マスコミの監視、市民からの批判を受けて談合が目に見えにくくなってきていることは事実であるが、実際はどうであろうか。公共事業は原則単年度で発生するが、前年度の8月ころから翌年度の予算編成の仕事は着手され、仕切り屋の任務はこの時期、役所に対する働きかけも含まれる。その手口は巧妙化し、政治家を使って根回することなどは朝飯前、時には住民に働きかけ、筵旗を立てさせることすら厭わない。典型的な例は公共団地などの建て替え等に見ることができる。一般競争入札の条件を厳しくするだけで参加企業が絞られてくることは前にも示したとおりである。建築する地域に本社所在地があること、会社経歴の中に同様の建築物の施工実績があることを条件とするだけで業者を少数に絞り込むことが可能だ。念のために経営審査会の点数制限も上限と下限を付け加える。地元業者の育成を旗印にすれば発注者側、すなわち役所からの抵抗はほとんどない。条件付一般競争入札と言えども市内各所に点在する公共団地の改築・新築・補修は条件次第で限られた小数の入札希望業者が常連化し、阿吽の呼吸で落札業者をたらい回しにしている。これを談合といわずして何というのだ。
問題は一般競争入札の条件付けにある。特定の業者を名指しする代わりに、複数の業者の共通する条件を設定することによって指名競争入札と同様の環境を造り上げ、特定の限られた業者に絞り込むことが可能なのである。新規業者として参加するにはどうしても仕切り屋の了解が必要となる。仕切り屋を動かすには政治家の口利き欠かせない、否ほかに方法がない。政治家は仕切り屋に頼めばパーティ券の購入など実績に応じて配分しお互いに持ちつ持たれつの関係にあるが、時に役所を動かす必要があるときは頼りになる存在なのである。仕切り屋も政治家との繋がりを温存したいと願っている。新陳代謝のない澱んだ業界に健全な発展と社会に対する貢献を期待することはできない。
次回は、「JV(共同企業体)のカラクリ」の予定です。




